大学の学部はどう変遷したのか(1970年代前半)

今回も学校基本調査のデータをもとに大学の学部がどう変遷したのか見ていきます。今回は1970年代前半(1970年度~1974年度)です。

Contents

1970年度

学部数999学部(前年比+18学部)

新しく設置された学部:なし

なくなった学部:なし

この年もそれまでの学園紛争の影響からか、あまり変動がありませんでした。一方で、医学部(+4学部)、歯学部(+2学部)と医療系学部が少しずつ増えてきました。

学部名 学部数 前年比
総計 999 +18
文学部 122 ±0
経済学部 115 +2
工学部 112 +1
法学部 68 +1
教育学部 58 +1
医学部 50 +4
商学部 49 ±0
家政学部 41 +1
理学部 40 +1
農学部 36 ±0

1971年度

学部数1,012学部(前年比+13学部)

新しく設置された学部:なし

なくなった学部:なし

まだまだ学部の動きに変動は少ないですが、この年に初めて学部数が1,000を超えました。

学部名 学部数 前年比
総計 1,012 +13
文学部 124 +2
経済学部 119 +4
工学部 112 ±0
法学部 71 +3
教育学部 58 ±0
医学部 51 +1
商学部 49 ±0
家政学部 41 ±0
理学部 40 ±0
農学部 36 ±0

1972年度

学部数1,018学部(前年比+6学部)

新しく設置された学部:人間科学部(大阪大学)

なくなった学部:文経学部(東北学院大学)、英文学部(広島女学院大学)

この年は医学部だけで9学部も増加している。

また、大阪大学で文学部から独立する形で人間科学部が新たに設置されました。この学部は初めて「人間」を関する学部です。ここから現在に至るまで「人間」という名称を含む学部は大きく増加します。自分たちへの関心が非常に高いことの裏返しでしょうか。

逆に、文経学部が廃止となり(募集停止は1964年)、文学部と経済学部に分離しました。また、英文学部が学科に日本文学科を加えたことで文学部になった。むしろ昔は英文だけで学部になっていたということが驚きです。

学部名 学部数 前年比
総計 1,018 +6
文学部 125 +1
経済学部 121 +2
工学部 112 ±0
法学部 71 ±0
医学部 60 +9
教育学部 59 +1
商学部 48 -1
家政学部 40 -1
理学部 40 ±0
農学部 36 ±0

1973年度

学部数1,032学部(前年比+14学部)

新しく設置された学部:保健学部(琉球大学)※

なくなった学部:なし

ここで保健学部が新たに設置されたことになっている。ただし、これは1972年の沖縄県の復帰後初の学校基本調査であり、琉球大学などの学部が計上されたためであると考えられる。沖縄県の復帰前から琉球大学は存在しており、この年に初めて設置されたというわけではなく、この年に初めて計上されたというのが表現上正しいと思います。

しかし、ここで「保健」という名称を関した名前の学部が登場したことは事実であり、前年の「人間」同様、「保健」の名称を含む学部はこの後大きく増加していきます。

学部名 学部数 前年比
総計 1,032 +14
文学部 127 +2
経済学部 121 ±0
工学部 113 +1
法学部 73 +2
医学部 61 +1
教育学部 60 +1
商学部 48 ±0
家政学部 40 ±0
理学部 40 ±0
農学部 37 +1

1974年度

学部数1,046学部(前年比+14学部)

新しく設置された学部:第一学群、体育専門学群、医学専門学群(すべて筑波大学)

なくなった学部:なし

この年の大きな話題は筑波大学の新設です。筑波大学は3年間にわたって学部が設置され、この年がその初年度となります。初年度は第一学群、体育専門学群、医学専門学群という3つの「学群」が設置されました。

学部ではなく学群として設置されたのは教育組織と教員組織を分けるということからスタートしているからです。現在ではこれに合わせて学群を名乗る大学も出てきている。一時期学群を名乗り、後に学部に戻した大学もありますので、筑波大学が現在まで学群を使用しているのは国策で一から設置された大学という特殊な事情が影響していると考えられます。

その筑波大学でももう第一学群~第三学群という番号での学群名は存在しません。さすがに番号だと何を扱う学群であるはわかりませんからね。

学部名 学部数 前年比
総計 1,046 +14
文学部 129 +2
経済学部 119 -2
工学部 113 ±0
法学部 75 +2
医学部 65 +4
教育学部 60 ±0
商学部 47 -1
家政学部 40 ±0
理学部 40 ±0
薬学部 38 +3

1970年代前半の特徴

1970年代前半の特徴は以下の通りです。

1.それほど学部は増えなかった(学園紛争の影響が続いていたか?)
2.医学部が増えた
3.沖縄県の復帰や筑波大学の学群設置など、政治・国策関係の変化があった

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