大学の学部はどう変遷したのか(1970年代後半)

今回も学校基本調査のデータをもとに大学の学部がどう変遷したのか見ていきます。今回は1970年代後半(1975年度~1979年度)です。

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1975年度

学部数1,058学部(前年比+12学部)

新しく設置された学部:第二学群、芸術専門学群(以上筑波大学)、看護学部(千葉大学)、生活科学部(大阪市立大学)、総合科学部(広島大学)

なくなった学部:なし

この年も引き続き筑波大学に第二学群と芸術専門学群が設置されました。それ以外に千葉大学に看護学部が、大阪市立大学に生活科学部が、広島大学に総合科学部が設置されました。新しく設置されたのが全て国公立大学というのもこの年の特徴です。

看護学部は2017年現在で114学部と、最も増えた学部の中の1つといえます。

生活科学部はそれまでの家政学部に代わるものとして設置されました。そのため食物学科、被服学科、児童学科など家政学部と同様の学科が設置されています。現在では家政よりも生活科学という名称のほうが多くなっています。

総合科学部は教養系の学部であり、教養部の廃止と連動しています。その後、徳島大学や大阪府立大学に設置されました。それに加えて国際総合科学部として山口大学や横浜市立大学にも設置された学部名称です。(横浜市立大学は2019年の学部改組でなくなってしまいましたが)。

学部名 学部数 前年比
総計 1,058 +12
文学部 131 +2
経済学部 120 +1
工学部 114 +1
法学部 75 ±0
医学部 69 +4
教育学部 60 ±0
商学部 46 -1
家政学部 40 ±0
理学部 40 ±0
薬学部 39 +1

1976年度

学部数1,066学部(前年比+8学部)

新しく設置された学部:なし

なくなった学部:なし

前年多くの学部が設置されたが、この年は筑波大学の新設もなく動きのない年度となりました。

大学はこの年あまり動きのない年でしたが、実はこの年に専門学校(正確には専修学校専門課程)が創設されました。ここから高卒後の進路が、大学、短期大学、専門学校と3分化していきます。

学部名 学部数 前年比
総計 1,066 +8
文学部 131 ±0
経済学部 121 +1
工学部 116 +2
法学部 76 +1
医学部 70 +1
教育学部 61 +1
商学部 46 ±0
家政学部 40 ±0
理学部 40 ±0
薬学部 40 +1

1977年度

学部数1,092学部(前年比+26学部)

新しく設置された学部:第三学群(筑波大学)、人文社会科学部(岩手大学)

なくなった学部:なし

この年はトップ10の学部軒並み増えたことでこれまで低調だった学部の増加が26学部増と大きく増えました。

また、筑波大学に第三学群が設置され、設立時の学部(学群)が揃いました。また、岩手大学に人文社会科学部が設置されました(学生受け入れは次年度から)。この学部も教養部が学部になったもので、教養系の色を持つ学部となっています。

学部名 学部数 前年比
総計 1,092 +26
文学部 131 ±0
経済学部 124 +3
工学部 120 +4
法学部 80 +4
医学部 73 +3
教育学部 61 ±0
商学部 48 +2
理学部 42 +2
薬学部 42 +2
家政学部 39 -1

1978年度

学部数1,098学部(前年比+6学部)

新しく設置された学部:環境保健学部(麻布大学)

なくなった学部:なし

前年は学部数が大きく増加しましたが、この年は一転6学部の増加に留まりました。

この年には麻布大学に環境保健学部が設置されました。この学部が「環境」という名称を含む初めての学部であり、この後、「環境」という名称は様々なバリエーションで学部名称に盛り込まれていきます。「環境」は最も多様な使い方をされている言葉の一つです。

学部名 学部数 前年比
総計 1,098 +6
文学部 130 -1
経済学部 124 ±0
工学部 121 +1
法学部 81 +1
医学部 74 +1
教育学部 60 -1
商学部 48 ±0
理学部 42 ±0
薬学部 42 ±0
家政学部 39 ±0

1979年度

学部数1,121学部(前年比+23学部)

新しく設置された学部:学校教育学部(上越教育大学、兵庫教育大学、広島大学)、経営情報学部(産業能率大学)、国際関係学部(日本大学)、生物生産学部(広島大学)

なくなった学部:なし

新しい学部が6大学に設置されました。特に学校教育学部は上越教育大学、兵庫教育大学という新しい教育大学の設置も伴っています(両大学とも入学者は1981年度から)。その後鳴門教育大学も同様の形で設置されました。

また、それ以外に経営情報学部が産業能率大学に、国際関係学部が日本大学に、生物生産学部が広島大学に設置されました。広島大学に2学部が新設されており、4年前の総合科学部と合わせて多くの学部改組を行っています。

生物生産学部は水畜産学部が改変されてできたものであり、これまでの水産・畜産というところからやや範囲を広げた学部となっています。

この年には「情報」「国際」という名称を冠した学部が初めて設置されました。この2つの名称を関する学部は後に大きく増加する。

これらも含めてこの年に新しく使用された言葉は「学校」「情報」「国際」「生物」です。

学部名 学部数 前年比
総計 1,121 +23
文学部 133 +3
経済学部 126 +2
工学部 122 +1
法学部 82 +1
医学部 77 +3
教育学部 60 ±0
商学部 48 ±0
理学部 45 +3
薬学部 42 ±0
家政学部 39 ±0

1970年代後半の学部の特徴

1970年代後半の学部の特徴は以下の通りです。

1.国立大学の教養部の改編が始まった
2.環境、情報、国際など後の学部の元になる学部が初めてできた
3.新しい教育大学が新設された(入学者の募集はまだ始まっていない)

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