関西の大学グループで第2グループとして総称されることの多い産近甲龍(京都産業大学・近畿大学・甲南大学・龍谷大学)ですがこれらの大学の入学定員がどのように推移しているのか見ていきたいと思います。
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入学定員の差は大きい
大学のグループとしては1グループですが、入学定員は最も大きい近畿大学の約8,000人から甲南大学の約2,000人まで非常に幅が大きくなっています。
特に近畿大学は1962年の時点では2,000人を切っていましたが、約4倍に増加しています。また、京都産業大学も1965年の設立から3,000人以上も増やしています。
昼間部に限定すると近大の増加がより顕著
上のグラフは昼間部の定員に限定したものですが、これを見ると近大が段階的に入学定員を増加させていることがわかります。もともと夜間部として持っていた定員を昼間部にどんどん移管していることがその要因です。
学部新設はどうなっているのか?(1962年以降)
これらの大学の1962年以降の学部新設状況とみていきます。
京都産業大学
京都産業大学の学部新設状況です。
経済学部(1965年※大学新設)
理学部(1966年)
経営学部(1967年)
法学部(1967年)
外国語学部(1968年)
工学部(1990年)
文化学部(2001年)
コンピュータ理工学部(2009年)
総合生命科学部(2010年)
現代社会学部(2017年)
情報理工学部(2018年※コンピュータ理工学部の改組)
国際関係学部(2019年)
生命科学部(2019年※総合生命科学部の改組)
京都産業大学は経済学部のみの大学として設置されましたが、すぐに理学部や法学部などオーソドックスな学部を設置していきます。現在では10学部体制となっています。
その後も学際系学部はあまり設置せず、オーソドックな学部の設置を行っています。ただし、文学部ではなく外国語学部と文化学部、社会学部ではなく現代社会学部とやや表示名を変えています。
また、コンピュータ理工学部や総合生命科学部なども設置していますが、それぞれ情報理工学部、生命科学部とよりオーソドックスな名称に後年変更しています。
近畿大学
近畿大学の学部新設状況です。
第二工学部(1966年)
医学部(1974年)
九州工学部(1985年※第二工学部からの名称変更)
文芸学部(1989年)
生物理工学部(1993年)
経済学部・経営学部(2003年※商経学部からの改組)
産業理工学部(2004年※九州工学部からの名称変更)
総合社会学部(2010年)
建築学部(2011年)
国際学部(2016年)
近畿大学は1962年当時は法学部、商経学部、理工学部、薬学部、工学部の5学部体制でしたが、現在では14学部体制となっています。
近畿大学の特徴は理工系学部の数の多さによります。現在でも理工学部、工学部、生物理工学部、産業理工学部と4つの学部があります。これはもちろん分野が異なる(特に生物理工学部は生物系が多い)というのもありますが、立地が異なるという点が大きいです。理工学部は大阪、 生物理工学部は和歌山、 工学部は広島、産業理工学部は福岡にあります。
甲南大学
甲南大学の学部新設状況です。
理工学部(2001年※理学部からの改組)
知能情報学部(2008年)
マネジメント創造学部(2009年)
フロンティアサイエンス学部(2009年)
甲南大学は1962年当時文学部、理学部、法学部、経済学部、経営学部の5学部体制でしたが、現在では8学部体制となっています。
甲南大学は学部の新設が少なくなっています。また、新設時期も2000年代に集中しています。
新設された学部についてでも、既存学部のスピンオフという要素が強いものとなっています。例えば知能情報学部とフロンティアサイエンス学部は理学部の一部を分離し教育内容等に特徴を持たせています。
龍谷大学
龍谷大学の学部新設状況です。
経営学部(1966年)
法学部(1968年)
理工学部(1989年)
社会学部(1989年)
国際文化学部(1996年)
政策学部(2011年)
国際学部(2015年※国際文化学部からの名称変更)
農学部(2015年)
先端理工学部(2020年※理工学部から名称変更予定)
龍谷大学は1962年当時は文学部と経済学部の2学部体制でしたが、現在では9学部体制となっています。
龍谷大学も以前は2学部しかなかったため、当初は経営学部などオーソドックスな学部が設置されています。また、1989年には新キャンパスの設置で学部が設置されています。
龍谷大学の特徴としては近年の自然科学系の新設が挙げられます。その点で農学部の設置は特徴的です。
どの系統の定員が多いのか?
ここからは産近甲龍の各大学がどの分野に力を入れているかを見ていきます。以下の基準で分類しました。2020年は予定です。
人文科学系:文学部、文化学部、国際文化学部、文芸学部、外国語学部
社会科学系:法学部、政策学部、商経学部、経済学部、経営学部、マネジメント創造学部、社会学部、現代社会学部、総合社会学部
自然科学系:理学部、工学部、理工学部、産業理工学部、先端理工学部、コンピュータ理工学部、情報理工学部、知能情報学部、生物理工学部、総合生命科学部、生命科学部、フロンティアサイエンス学部、農学部
学際系:国際関係学部、国際学部、建築学部
医療系:医学部、薬学部
京都産業大学
学部名 | 1962年 | 1970年 | 1980年 | 1990年 | 2000年 | 2010年 | 2020年 |
人文科学系 | 0.0% | 22.7% | 18.5% | 13.5% | 18.8% | 22.8% | 19.0% |
社会科学系 | 0.0% | 68.2% | 74.1% | 76.6% | 66.5% | 64.9% | 63.2% |
自然科学系 | 0.0% | 9.1% | 7.4% | 9.9% | 11.1% | 14.4% | 12.3% |
学際系 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 5.5% |
医療系 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
京都産業大学は社会科学系が多く、現在も60%以上が社会科学系ですが、徐々に自然科学系の比率が上昇しており、学際系学部も既存学部からの分離(外国語学部から国際関係学部が分離した)で設置されています。
近畿大学
学部名 | 1962年 | 1970年 | 1980年 | 1990年 | 2000年 | 2010年 | 2020年 |
人文科学系 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 5.1% | 5.4% | 6.8% | 6.5% |
社会科学系 | 28.9% | 29.5% | 44.8% | 45.1% | 42.4% | 43.8% | 39.0% |
自然科学系 | 66.3% | 67.5% | 50.0% | 45.7% | 48.8% | 45.2% | 40.9% |
学際系 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 9.8% |
医療系 | 4.8% | 3.0% | 5.2% | 4.2% | 3.4% | 4.2% | 3.8% |
近畿大学の特徴は自然科学系の比率の高さです。先ほども見たように全国に理工系学部が設置されています。しかし、近年では自然科学系の比率は約40%に下がり、その分が社会科学系や学際系学部になっています。
また、産近甲龍の中で唯一医学部を持っており、医療系の比率が一定程度あります。
甲南大学
学部名 | 1962年 | 1970年 | 1980年 | 1990年 | 2000年 | 2010年 | 2020年 |
人文科学系 | 25.0% | 20.4% | 20.4% | 20.4% | 20.4% | 20.7% | 20.9% |
社会科学系 | 50.0% | 61.2% | 61.2% | 61.2% | 60.4% | 63.3% | 62.6% |
自然科学系 | 25.0% | 18.4% | 18.4% | 18.4% | 19.2% | 16.0% | 16.5% |
学際系 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
医療系 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
甲南大学は社会科学系を中心とした大学であり、ほぼ学部の構成比が変化していません。学部新設もスピンオフが多いことからオーソドックスな大学であるといえます。
龍谷大学
学部名 | 1962年 | 1970年 | 1980年 | 1990年 | 2000年 | 2010年 | 2020年 |
人文科学系 | 48.3% | 26.6% | 27.1% | 21.3% | 35.5% | 33.8% | 19.8% |
社会科学系 | 51.7% | 73.4% | 72.9% | 65.1% | 54.9% | 52.4% | 49.3% |
自然科学系 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 13.7% | 9.6% | 13.8% | 20.6% |
学際系 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 10.3% |
医療系 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
龍谷大学は時期ごとに優勢な学部系統が異なります。龍谷大学はもともと仏教系の起源をもつので人文科学系が優勢でした、その後社会科学系が優勢となり、現在は自然科学系と学際系の比率が上昇しています。