偏差値や大学ランキングについて考える

希望する学校がどのくらいのレベルなのかを知りたいときにまず目にするものは偏差値ですよね?最近では様々なところで偏差値以外の(偏差値は指標の一つになっていることが多いですが)ランキングを作る動きもあります。

偏差値は大手の予備校が模試や入試の追跡調査の結果をもとに計算していますし、大学ランキングはTHE社とベネッセが共同でやっている世界大学ランキング日本版や東洋経済がやっているランキングなどが有名です。

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進路指導のために登場した偏差値

偏差値の算出方法

そもそも偏差値はどういうもので、どういう算出方法なんでしょうか?

基本的には「取った複数の得点を同じ直線状に並べることで自分の位置がわかるようにした指標」です。

全員が同じ試験を受けていれば、それを並べれば何となくの順位などはわかります。しかしその位置がどのくらいのポジションなのかはわかりませんよね。平均より上だった、下だった。何番だったなどしかわかりません。

そこで平均点を50に調整して、そこからの距離という観点で並べなおす処理をして計算をします。

ちょっとずれますが、センター試験(共通テストに名前が変わりますが)はあまり偏差値化しませんよね?得点率で見ます。

あまり得点率と偏差値に違いが見られないからなのか、合否ラインとして記載されているのかはわかりませんが。

偏差値の落とし穴

この偏差値すごく便利なものですが、決定的な落とし穴があります。それは「母集団」の問題です。

頭のいい集団でポジションなのか、そうでない集団でのポジションなのか。外から見ている人にはわからないため、数字だけが独り歩きする危険性が常にあります。

偏差値60、偏差値50、偏差値40と書かれるとすごく差があるように見えますが、同じ人物がすべての偏差値になることもあり得ます。

もっというと同じ人物同じ試験でも科目ごとに偏差値を出すことで、複数の偏差値があるということもざらです。国英社の文系型と英数理の理系型で全く数字が違うという人も多いのではないでしょうか。

それに大学の合否ラインとして使用される場合も、当然母集団が異なります。全員を同じ基準で見ているわけではないので、どうしても限られた母集団の数字を元に計算することになります。

そのため、同じ人が様々な偏差値を取るのと同じように同じ大学でも様々な偏差値が生まれてしまいます。

それに模試の点数から算出した偏差値が主に用いられるため、模試を受けない人は対象から外れてしまいます。そのため、主に一般入試だけを対象としたものになってしまうのも問題です。

特にここ数年は指定校推薦などで入学する人が増えており、この偏差値が示すのは全体の一部になっていることは注意が必要です。

以上をまとめると個人の偏差値は切り方によって変動する大学の偏差値は特定の科目の一般入試のみを対象としているということは知っておいて損はないと思います。

ちょっと話は逸れますが、一時期話題になったFランク(今も使われますが)という数字(ではなく算出不能の記号ですが)は単に「その母集団にいない」だけであり、偏差値がないというわけではありません。

偏差値以外の指標を求めて作られた大学ランキング

どういう項目が指標にされているのか?

よく進学先を判断するときに偏差値を参照しますが、それに対して疑問を持つ人はたくさんいます。(個人的には学力とやる気は相関すると思っているので母集団の問題を除けば、信頼性は高いと思っています)

もっと指標があるのではないか?入学者の学力だけで判断するのはおかしい。といった感じです。

学校側からしても、うちはこういうところが良い、偏差値だけで判断しないでくれ。という意識はあると思います。

そういう背景から主に以下の数値が採用されてランキング化されています。

・教育資源(教員比率や研究業績など)
・国際性(留学生比率など)
・財務(健全性)
・就職(就職率や大手企業就職など)
・評判(高校や企業へのアンケートなど)

学生の学力(偏差値)以外の指標が多く採用されていることがわかります。

問題点は?

一見様々な指標を取り入れているため、偏差値の指標より信頼性が高いと思われるかもしれません。

ところが様々な指標を合わせることで、かえってあいまいな性格になることが指摘されています。(谷岡一郎『ランキングのからくり』)

上に挙げた偏差値について考えてみてもいいかもしれません。A模試の偏差値とB模試の偏差値とC模試の偏差値を案分して足し合わせます。って言われたらあれ?って感じますよね。

それがまだ模試なら全部学力関連なので妥当性はありそうですが、それ以外の項目を足し合わせて順番に並べるという行為に意味がないことがわかるでしょう。

比率によって順位は変わる

さらに複数の視点を混ぜる際に、それぞれの指標を何割にするかという点も問題があります。というのもそれぞれの指標がどのくらいの影響力があるのかわからないからです。

例えばTHEのランキングが一番有名かと思いますが、その日本版では国際性が20%以上を占めています(国際性という項目だけでは20%ですが、それ以外に国際性を重視した評判調査が入っています)。

でもこの指標、むしろほとんどの大学には関係ないですよね?でもこの指標が4分の1くらいを占めていたら、この部分が関係ない大学は仮に100点満点だとすると80点満点くらいからスタートすることになります。

逆にこの部分を対象としている大学は下駄をはいた状態でスタートするので総じて点数が高くなり、ランキングも上がります。

じゃあもしこの数値が10%しか割り当てられなかったら?もちろんこの数値以外も割合が変わったら?ランキングは一気に変動します。対象となる大学自体は何も変わっていないのに。

まだ比率が記載してあるランキングは良心的で、比率の明示すらないランキングが多いです。これでは恣意的にランキングを作っていると疑われても仕方ありません。

評判という怪しい指標

個別の項目にも怪しいところはあります。

いろいろなところで口コミが参考になるという事例は多々見られます。

ただランキングという視点で見ると評判は最も向いていないのです。

というのも評判を知るには何らかの調査が必要ですが、その対象はみんな知ってるか、全く知られてないか二極化しやすいのです。

全部の大学を知っているという人はごくまれでしょう。いや不可能です。700以上ある大学を1日1つ見ても2年かかります。2年かかると大学の中身は変わります。

そうなると点数の高い一部の大学と全く点数の出ないほとんどの大学という構図になります。それだと実質的に順位が付くのが一部の大学だけです。

これも上に書いた国際性と同じで、選ばれし一部の大学だけが下駄をはかされた状態になります。

財務って?

数字になるものでも怪しいものはあります。財務がそうです。

財務の安定性が評価されることが多いですが、その中で経常収支差額(企業でいう経常利益に近い)の多さが基準とされることがあります。

でも企業なら儲けることが目的なので経常利益率が高いというとプラス評価になりますが、学校の場合は儲けることが目的ではなく教育にいかにお金を投下したかも評価される必要があります。その場合経常収支差額が多いというのはむしろマイナスの指標になります。むしろ経常収支差額がマイナスの大学方が良い大学という逆転現象も起きます。

財務についてはこの記事にも書きましたので見てみてください。

まとめてみると

・母集団の難点はあるがまだ偏差値の方が指標としては信頼できる。
・ランキングも個別の数字を追うだけなら見るべきものは多い。
・でもそれだとわかりにくくて誰も見てくれないから作ってくれないだろうな。

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