各大学の財務状況についてみてみたいと思います。基準は以下の通りです。
今回は早慶上智(早稲田大学・慶応義塾大学・上智大学)の財務情報を見ていきます。各大学の財務情報は以下の通りです。基本は学校法人全体なので附属校の財務なども含まれています。また財務諸表は2015年度から新しい方式になっているため、2015年度以降を収録しています。基本金については2010年度以降を参照しました。
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教育活動収支差額はどうなっているのか?
教育活動収支差額比較表
教育活動収支差額 (単位:百万円) | 慶応義塾 | 早稲田 | 上智 |
2015年度 | 5,904 | 3,080 | 601 |
2016年度 | 3,299 | 2,851 | 24,511 |
2017年度 | 2,790 | 2,544 | 393 |
2018年度 | -2,318 | 2,385 | 882 |
まず本体の教育活動の結果である教育活動収支差額を見ていきます。
どの大学も差額を小さくしている
この教育活動収支差額は大きければ良いわけではなく、全体の収支さえ問題なければむしろ小さいほど学費以上に教育に還元されていてよい大学であるといえます。
そういう意味では慶應義塾は過去4年間でどんどんその数字を小さくしていき、2015年度は約59億近くあったものが2018年度は約ー23億円になっています。早稲田についても慶応義塾ほど極端ではありませんが約31億から約24億に小さくなっています。
上智は2016年度の数値が非常に大きくなっていますが、これは高校を合併(栄光学園、六甲学院、広島学院、 上智福岡)したことで生じています。ですのでこの年は除外して考えると、約4億~9億の範囲となっています。
経常収支差額はどうなっているのか?
経常収支差額比較表
経常収支差額 (単位:百万円) | 慶応義塾 | 早稲田 | 上智 |
2015年度 | 9,179 | 5,202 | 1,431 |
2016年度 | 6,389 | 5,651 | 25,519 |
2017年度 | 6,150 | 4,989 | 2,726 |
2018年度 | 1,137 | 5,217 | 2,140 |
経常収支差額はプラスで推移
経常収支差額の段階では3大学ともプラスで推移しています。慶應義塾は教育活動収支差額はマイナスになっていましたが、経常収支差額の段階では約11億のプラスとなっています。
早稲田は過去4年間50憶前後となっています。上智は合併前は14億でしたが、合併後は20億以上となっています。
教育研究経費比率はどうなっているのか?
教育研究経費比率比較表(教育研究経費/教育活動支出で計算)
教育研究経費比率 | 慶応義塾 | 早稲田 | 上智 |
2015年度 | 49.4% | 45.2% | 35.8% |
2016年度 | 49.9% | 44.9% | 32.7% |
2017年度 | 50.2% | 44.6% | 35.9% |
2018年度 | 51.7% | 45.2% | 36.0% |
教育研究経費比率は高い
教育研究経費の比率は支出のうちどのくらいが教育や研究に振り向けられているかの数字です。
この比率を見てみると、慶応義塾は教育研究経費の比率が50%を超えています。つまり支出のうち半分は教育研究経費として支出していることになります。ただし、慶應義塾の場合は医学部を擁しているため、その部分の経費も教育研究経費として計上されています。(医療経費を除くと32~34%となります)
それを踏まえると、むしろ早稲田の約45%という数字は非常に大きいといえます。
上智は36%と低く見えてしまいますが、他のブランド大学(マーチや関関同立)と同じ水準となっており、むしろ慶應義塾と早稲田が高いといえます。
支払資金はどうなっているのか?
支払資金推移比較表
支払資金(単位:百万円) | 慶応義塾 | 早稲田 | 上智 |
2015年度 | 25,119 | 34,761 | 4,998 |
2016年度 | 28,739 | 42,038 | 8,494 |
2017年度 | 30,559 | 33,015 | 7,244 |
2018年度 | 32,377 | 33,052 | 8,842 |
支払資金も多い
慶応義塾と早稲田はともに300憶以上の支払資金を保有しています。上智も90憶弱の支払資金を有していますが、この2大学と比較すると少なく見えてしまいます。
慶応義塾は教育活動収支差額は減っていますが、支払資金については過去4年間で増加しています。
第3号基本金はどうなっているか?
第3号基本金推移比較表
第3号基本金(単位:百万円) | 慶応義塾 | 早稲田 | 上智 |
2010年度 | 42,474 | 25,409 | 9,575 |
2011年度 | 42,902 | 25,701 | 9,733 |
2012年度 | 43,827 | 27,275 | 9,874 |
2013年度 | 48,180 | 27,479 | 10,065 |
2014年度 | 54,339 | 27,760 | 11,452 |
2015年度 | 63,600 | 28,460 | 11,807 |
2016年度 | 66,255 | 27,526 | 12,729 |
2017年度 | 68,793 | 28,294 | 12,902 |
2018年度 | 73,117 | 28,771 | 13,183 |
3大学とも増加している
奨学金などの基金に充てられる第3号基本金の額ですが、3大学とも増加しています。
規模としては慶応義塾が約731億、早稲田が約288億、上智が約131億となっています。
その中でも慶應義塾は2010年から2018年までの9年間で300憶も上積みされています。早稲田と上智がそれぞれ30~40億しか増加していないことを考えると、慶應義塾の奨学基金に対する積極的な姿勢が読み取れます。
第3号基本金を積み上げていない大学も多い中、この3大学とも多くの基金を有しており、ここから奨学金や研究に対しての支援金が支出されることを考えると、学生にとってはお得であるといえます。
まとめ
3大学の状況をまとめると以下の通りです。
1.3大学とも安定的に運営されている
2.経常収支差額はプラスの状態で教育活動収支差額を小さくしており教育活動への還元率が高くなっている
3.奨学金や研究経費に充てられる第3号基本金は3大学とも増加している
以上です。