ここでは早慶上理(早稲田、慶応義塾、上智、東京理科)の学校法人別の在籍者数の推移を見ていきたいと思います。各法人の事業報告書から抜粋しました。
通信制の大学・短大や各種学校などは含みません。
当然各学校法人個別に公表している情報なので、公表されている年度には限界があります。そこで2012年度以降の数値を追ってみました。
数字をごちゃごちゃ並べるのも見づらいのでグラフ化してみました。
パッと見ても特徴がはっきり出ていると思います。早稲田大学は在籍者数が減少し、慶應義塾は横ばい、東京理科大学も減少し、上智学院は増加しています。
当然この数値は各学校法人の経営戦略が影響しています。ということで各学校法人の経営についてみていきたいと思います。
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早稲田大学
早稲田大学はここ数年在籍者数を減らしています。もちろん定員割れというわけではありません。経営戦略として、大学の教育効果を向上させるために入学者を減らしています。
もちろん大学の定員厳格化の対象にもなっていることから、最終的には収容定員に近い数値まで減少させることが予想されます。
実際には早稲田大学を中退する人は少なく、留年しても在籍しているため、それを見越した定員管理が必要となります。
一方で附属校については大きな変動はありません。唯一川口にあった専門学校が閉校したくらいです。
慶應義塾
慶應義塾はここ数年在籍者数がほとんど変わっていません。設置している学校の顔ぶれに変化がないことに加え(横浜に初等部が設置された程度)、大学の在籍者数もほぼ一定です。
今後ですが、目下に気になる項目としては東京歯科大学との合併交渉の結果がどうなるかということにあると思います。
東京歯科大学自体はそれほど大きくないとはいえ、それでも短大も含め1200人弱の在籍者がいます。これが上乗せされることから今後は在籍者数が増加すると考えられます。
上智学院
上智学院は在籍者数を増やしていますが、二段階に分けて増加していることがわかります。
そのそれぞれが法人合併によって起きたものです。
一度目は2011年の聖母大学との合併です。その際は規模が大きくないことと、事業報告書への記載のタイミングなどで大きく増えているようには見えません。
二度目は2016年の栄光学園、六甲学院、広島学院、上智福岡の各中学校・高校との合併です。これによって在籍者数が大きく(4000人前後)増加しました。
細かいことを言うと大学時代もやや収容定員を増やしているため、在籍者は増加傾向でしたが、定員厳格化の影響でここ数年は減少傾向に転じました。
減少している部分としては附属の専門学校があります。これは社会福祉系の学科のみであり、年々在籍者を減らしています。
ただ、上記の中学校・高校の合併は非常に大きいと考えられます。なんといっても全国の(西日本が多いですが)超優秀な高校であるため、非常に安定的な在籍が見込めます(その分内部進学は期待できませんが)。
東京理科大学
最後に東京理科大学です。東京理科大学は上智学院とは逆で、二段階で在籍者数が減少しています。
こちらは諏訪東京理科大学と山口東京理科大学が公立化に伴い、学校法人を離脱したことが影響しています。
現実的には私立大学の時期には両校とも定員割れの状態であり、公立化したことにより両校とも定員を満たし、薬学部などの新設の学部等も設置されるようになりました。
東京理科大学でも定員割れの対策に力を入れる必要はないため、結果的に良かったのではないでしょうか。もちろん公立大学になったからといって学生募集がずっと安泰というわけではなく、財政的な負担も生じますが、これはもう東京理科大学の関与することではないです。
それとは別に東京理科大学で気になることといえば、留年者をどのように考えるかということです。東京理科大学は授業が厳しく、留年が多いことで有名です。最新の情報公開によると2017年度入学者のうち卒業時点で留年しているのは15%もいるそうです。
留年率の低い大学であれば在籍者を管理することがそれほど難しくないと思いますが、留年者は在籍者数にカウントされます。それがどの程度発生するかで入学者の数を減らさなければなりません(そうしないと定員厳格化の要件に抵触してしまいます)。
そのためここ数年は入学定員の92~98%程度しか入学させられないという状態になっています(入学定員増とそれにともなう収容定員増でなんとか解消されそうですが)。
今後この留年の多いシステム(教育の質の保障という意味では留年してでもきちんと教育して卒業させるという校風は維持してもらいたいところですが)が経営戦略のネックになってくるような気がします。