旧帝大 (北海道大学・東北大学・東京大学・名古屋大学・京都大学・大阪大学・九州大学) は各地域のトップ大学として一括りにされることが多いですが、それぞれに入試に対するスタンスが異なります。
当然そこからの入学後の教育にも影響します。そこで旧帝大の入試のスタンスについて比較してみたいと思います。
なお、東大と京大の入試については別に比較していますので、そちらもご参照ください。
東大京大以外の入試の情報は以下のサイトから2020年のものを参照しました。
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どの入試に注力しているか?
募集区分別定員
以下は各大学の入試区分別の募集定員です。
北海道大学
試験区分 | 試験名 | 人数 | 比率 |
一般入試 | 総合入試 | 1,112 | 44.9% |
一般入試 | 学部別入試(前期) | 805 | 32.5% |
一般入試 | 学部別入試(後期) | 492 | 19.9% |
国際総合入試 | 総合入試 | 15 | 0.6% |
AO入試 | 学部別入試 | 54 | 2.2% |
合計 | 合計 | 2,478 | 100.0% |
東北大学
試験名 | 人数 | 比率 |
一般入試(前期) | 1,661 | 70.2% |
一般入試(後期) | 98 | 4.1% |
AO入試 | 607 | 25.7% |
合計 | 2,366 | 100.0% |
東京大学
試験区分 | 人数 | 比率 |
一般入試(前期) | 2,960 | 96.7% |
推薦入試 | 100 | 3.3% |
合計 | 3,060 | 100.0% |
名古屋大学
試験名 | 人数 | 比率 |
一般入試(前期) | 1,734 | 82.3% |
一般入試(後期) | 5 | 0.2% |
AO入試 | 368 | 17.5% |
合計 | 2,107 | 100.0% |
京都大学(※法学部の後期試験は特色入試に含む)
試験区分 | 人数 | 比率 |
一般入試(前期) | 2,663 | 94.4% |
特色入試 | 158 | 5.6% |
合計 | 2,821 | 100.0% |
大阪大学
試験名 | 人数 | 比率 |
一般入試(前期) | 2,873 | 88.9% |
AO入試 | 190 | 5.9% |
推薦入試 | 170 | 5.3% |
合計 | 3,233 | 100.0% |
九州大学
試験名 | 人数 | 比率 |
一般入試(前期) | 2,059 | 80.6% |
一般入試(後期) | 277 | 10.8% |
AO入試 | 186 | 7.3% |
推薦入試 | 10 | 0.4% |
国際系入試 | 23 | 0.9% |
合計 | 2,555 | 100.0% |
どの大学も一般入試を重視するが
旧帝大はどの大学も一般入試の比率が高く、ほとんどの大学が90%前後となっています。旧帝大が「学力の高い(中身については後で見てみます)」受験生を優先的に選抜したいという意図が見えます。
その中で東北大学と名古屋大学はAO入試の比率が高くなっています。
AO入試は時期的に早く入試が始まることがポイントとなりそうです。東北大学・名古屋大学は東京大学・京都大学といった大学と比較されることが多く、優秀層を早めに獲得したいという意図が表れているのだと推測されます。
一方で北海道大学と九州大学は一般入試の中でも後期試験の比率が高くなっています。旧帝大は後期試験を廃止してAO入試や推薦入試に変えているところが多く、後期試験を残している大学のほうが少なくなっています。
そのため、前期入試でダメだった高学力層に改めて受験してもらいたいという意図が表れいると推測されます。後期試験はセンター試験の比率が前期試験よりも高く、総合問題や小論文・面接といった試験の実施率も高くなっています。
まとめると以下の通りになると思います。
前期重視:東京大学・京都大学・大阪大学
AO推薦にも注力:東北大学・名古屋大学
後期にも注力:北海道大学・九州大学
こうしてみると地域的な特徴も影響している可能性があります。
募集単位も違いがある
東京大学が文Ⅰ~Ⅲ、理Ⅰ~Ⅲという文系理系の大括りで募集しているというのは有名ですし、入試の時点で学部(学科)が決定する京都大学と比較されることも多いです。
それ以外の5大学は学部(学科)別に入試を行っていますが、北海道大学だけは総合入試として、学部別入試とは並行して募集が行われており、理系学部はほぼ総合入試で特定の科目を重視する形式の入試が行われています。
このハイブリッドな入試形式は非常に珍しいですが、理系を中心に行われていることを考えると、学部学科特性にあった受験生を集めることと、(特に理系科目の)ハイタレントを集めることの二兎を追っているようです。
センター試験と二次試験の比率はどうなっているのか?
配点比率一覧(前期入試)
北海道大学
学部 | センター | 二次 |
全学部 | 40.0% | 60.0% |
医学部 | 36.4% | 63.6% |
東北大学
学部 | センター | 二次 |
文学部 | 37.5% | 62.5% |
教育学部 | 36.0% | 64.0% |
法学部 | 33.3% | 66.7% |
経済学部(文系) | 50.0% | 50.0% |
経済学部(理系) | 50.0% | 50.0% |
理学部 | 36.0% | 64.0% |
医学部医学科 | 20.8% | 79.2% |
医学部保健学科 | 40.0% | 60.0% |
歯学部 | 42.9% | 57.1% |
薬学部 | 29.0% | 71.0% |
工学部 | 36.0% | 64.0% |
農学部 | 33.3% | 66.7% |
東京大学
学部 | センター | 二次 |
全学部 | 20% | 80% |
名古屋大学
学部 | センター | 二次 |
文学部 | 42.9% | 57.1% |
教育学部 | 33.3% | 66.7% |
法学部 | 60.0% | 40.0% |
経済学部 | 37.5% | 62.5% |
情報学部(自然) | 45.0% | 55.0% |
情報学部(社会) | 45.0% | 55.0% |
情報学部(コンピュータ) | 40.9% | 59.1% |
理学部 | 38.3% | 61.7% |
医学部医学科 | 35.3% | 64.7% |
医学部保健学科 | 37.5% | 62.5% |
工学部 | 40.9% | 59.1% |
農学部 | 39.1% | 60.9% |
京都大学
学部 | センター | 二次 |
総合人間学部(文系) | 18.8% | 81.3% |
文学部 | 33.3% | 66.7% |
教育学部(文系) | 27.8% | 72.2% |
法学部 | 32.9% | 67.1% |
経済学部(文系) | 31.3% | 68.8% |
総合人間学部(理系) | 12.5% | 87.5% |
教育学部(理系) | 27.8% | 72.2% |
経済学部(理系) | 27.8% | 72.2% |
理学部 | 18.8% | 81.3% |
医学部(医学科) | 20.0% | 80.0% |
医学部(人間健康科学科) | 25.0% | 75.0% |
薬学部 | 26.3% | 73.7% |
工学部 | 20.0% | 80.0% |
農学部 | 33.3% | 66.7% |
大阪大学
学部 | センター | 二次 |
文学部 | 38.5% | 61.5% |
人間科学部 | 50.0% | 50.0% |
外国語学部 | 23.1% | 76.9% |
法学部 | 50.0% | 50.0% |
経済学部A | 90.0% | 10.0% |
経済学部B | 10.0% | 90.0% |
経済学部C | 50.0% | 50.0% |
理学部 | 30.0% | 70.0% |
医学部 | 25.0% | 75.0% |
医学部(看護) | 60.0% | 40.0% |
医学部(医療技術) | 45.5% | 54.5% |
歯学部 | 36.0% | 64.0% |
薬学部 | 40.0% | 60.0% |
工学部 | 35.0% | 65.0% |
基礎工学部 | 30.0% | 70.0% |
九州大学
学部 | センター | 二次 |
共創学部 | 33.3% | 66.7% |
文学部 | 33.3% | 66.7% |
教育学部 | 42.9% | 57.1% |
法学部 | 33.3% | 66.7% |
経済学部 | 42.9% | 57.1% |
経済学部(経済工) | 37.5% | 62.5% |
理学部 | 39.1% | 60.9% |
医学部 | 39.1% | 60.9% |
医学部(生命) | 36.0% | 64.0% |
医学部(看護) | 52.9% | 47.1% |
医学部(医療技術) | 39.1% | 60.9% |
歯学部 | 39.1% | 60.9% |
薬学部 | 39.1% | 60.9% |
工学部 | 39.1% | 60.9% |
芸術工学部 | 40.0% | 60.0% |
農学部 | 37.5% | 62.5% |
東大・京大と他の大学は比率が異なる
東京大学と京都大学は概ねセンター試験20%:二次試験80%となっています。
それ以外の大学は学部学科により差がありますが、センター試験40%:二次試験60%が平均となっています。
これはつまり、東大と京大については独自の二次試験の問題への対応力が高い受験生が欲しく、それ以外の大学については標準的な問題を理解しているうえで、二次試験である程度の学力がある受験生を選抜するという意思を表明しているということになります。
試験科目についても、東大と京大に関しては4教科が基本ですが、それ以外の大学についてはほとんどの場合3教科が基本となっています。
比較的センター比率が高い社会科学系
北海道大学や東京大学のように全学部で比率が共通している大学もありますが、それ以外の大学は学部学科によってセンター二次の比率は異なります。
その中でも法学部・経済学部という社会科学系学部は比較的センター比率が高くなっています。
理系学部だとセンター試験で数学Ⅲの範囲の試験が行われないため、その部分が確実に二次試験に課されることから、他の科目と合わせると二次の比率が高くなります。
また人文科学系の学部だと地歴が課されることも多くなり、その分センター試験の地歴の比率が低くなりがちです。その中で社会科学系の学部は二次試験が公民が課されることはないため、その分二次試験の比率が下がりがちになります。
非常に特殊な大阪大学経済学部
旧帝大の学部の中でも大阪大学経済学部の配点は特殊です。
通常であればトータルの得点の高い順に合格となりますが、大阪大学経済学部だけは募集人員198人を以下の基準で選抜します。
1.センター90%、二次10%の比率で計算して上位65人
2.センター10%、二次90%の比率で計算して上位65人(1との重複あり)
3.1と2の残りの人数をセンター50%、二次50%の比率で計算して上位から合格
以上の複雑な計算となります。大阪大学経済学部はセンター試験学力によるオールラウンダーが欲しいと同時に、二次への対応力の高いハイタレントも欲しいということだと思います。
旧帝大の特徴まとめ
以上をまとめると以下の通りになります。
東京大学・京都大学:二次試験で対応できるハイタレントが多くほしい
大阪大学:学力が高いという点は東大・京大と同じだが、センター比率が高くオールラウンダー志向
東北大学・名古屋大学:東大・京大よりも先に意欲のある受験生を確保したい
北海道大学・九州大学:後期を実施して再チャレンジ層を集めてでもハイタレントが欲しい(特に北海道大学は学部学科にとらわれずにハイタレントを集めたい)