平成の間に大学と短大はどう変わったか

大学と短大の違いを見るために、この30年(つまり平成の間に)大学・短大の分野の人数がどう変化したかを学校基本調査の数字から追ってみます。

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分野別入学者の変化

以下の表が平成元年(1989年)と平静30年(2018年)の分野別入学者です。大学と短大はほぼ同じ分類ですが、短大の理学はその他の理学を理学分野として計算しました。また短大にだけ教養という分野がありましたが、そちらはその他に分類しなおしました。

分野大学
1989年
大学
2018年
増減比率短大
1989年
短大
2018年
増減比率
総計476,786 628,821 152,035 132%225,364 53,858 -171,506 24%
人文科学74,214 88,211 13,997 119%59,134 5,439 -53,695 9%
社会科学190,611 203,351 12,740 107%27,469 5,646 -21,823 21%
理学15,899 18,038 2,139 113%164 0 -164 0%
工学91,792 88,989 -2,803 97%10,379 1,315 -9,064 13%
農学15,631 17,857 2,226 114%1,817 273 -1,544 15%
保健21,629 71,461 49,832 330%9,833 3,470 -6,363 35%
商船411 0 -411 0%0 0 0 0%
家政9,181 18,025 8,844 196%57,750 9,985 -47,765 17%
教育33,828 46,791 12,963 138%38,888 20,267 -18,621 52%
芸術11,795 18,527 6,732 157%10,642 2,163 -8,479 20%
その他11,795 57,571 45,776 488%9,288 5,300 -3,988 57%

全体の人数については一目瞭然です。大学が約15万人増加したのに対し、短大は約17万人減少しています。

大学は保健(医療系)とその他が大きく増えたのに対して、短大は教育以外はどの分野も大きく減っています。大学のその他が増えた理由については別の記事「大学の学部はどう変遷したのか」も参考にしてください。

一方で短大は当初人文科学、社会科学、家政、教育が主力でしたが、今はほぼ教育だけが残っているという状態です。その次に多いのは家政ですが、もう1万人を切っています。

以下分野ごとの小項目を見てみましょう。

人文科学分野

まずは人文科学です。

分野大学
1989年
大学
2018年
増減比率短大
1989年
短大
2018年
増減比率
人文科学全体74,214 88,211 13,997 119%59,134 5,439 -53,695 9%
文学46,204 32,793 -13,411 71%52,786 3,173 -49,613 6%
史学6,909 6,363 -546 92%463 56 -407 12%
哲学5,895 11,551 5,656 196%729 107 -622 15%
人文その他15,206 37,504 22,298 247%5,156 2,103 -3,053 41%

人文科学については大学は確かに増加していますが、短大の減少分を補っていません。つまり、人文科学全体は減少していると言えます。大学はその他に分類されている可能性は残りますが。

特に文学は短大では6%にまで減っています。むしろ1989年段階では短大の人文科学といえば文学でした。それが一気に減少したため短大の人文科学はなくなってしまいました。

一方で大学も文学は減少していますが、なぜか哲学は増加しています。哲学科がそんなに増えたか?と思って学校基本調査の学科系統分類表を見てみたところ、哲学には心理学が含まれるようです。確かに心理学は公認心理師の創設もあって増加しているので、わかりますが哲学に入れなくてもいいんじゃないかと思います。

社会科学分野

次は社会科学分野です。

分野大学
1989年
大学
2018年
増減比率短大
1989年
短大
2018年
増減比率
社会科学全体190,611 203,351 12,740 107%27,469 5,646 -21,823 21%
法学・政治学45,620 37,582 -8,038 82%929 40 -889 4%
商学・経済学123,571 111,744 -11,827 90%21,646 3,359 -18,287 16%
社会学16,507 32,860 16,353 199%2,333 1,412 -921 61%
社会その他4,913 21,165 16,252 431%2,561 835 -1,726 33%

こちらも人文科学と同様に短大が大きく減少していて、大学の増加分では補えていません。

特に短大では商学・経済学の分野が主流でした。しかし、この分野は16%まで落ち込んでいます。一方で大学も減少しており、大学は社会学とその他が増加しています。

社会学には従来の「社会学」以外にもメディアやコミュニティなどが含まれており、その部分が増加に寄与したと考えられます。その他には社会科学の中で学際的(法学、経済学、社会学の分野だけどどこに分類するか微妙なもの)が多く入っています。

理学分野

次は理学分野です。とはいえ、上に書いたように短大は理学という大分類はありません。その他の中に理学が入っていたので、こちらを短大として計算しました。

分野大学
1989年
大学
2018年
増減比率短大
1989年
短大
2018年
増減比率
理学全体15,899 18,038 2,139 113%164 0 -164 0%
数学4,371 3,484 -887 80%0 0 0 0%
物理学3,154 2,488 -666 79%0 0 0 0%
化学3,133 2,457 -676 78%0 0 0 0%
生物学1,410 2,279 869 162%0 0 0 0%
地学739 614 -125 83%0 0 0 0%
理学その他3,092 6,716 3,624 217%164 0 -164 0%

そうはいってももう短大に理学の分野はありません。もともと研究的要素が強い分野なので、短大にないのは当然と言えば当然です。

大学は多少増加していますが、分野的には生物学が増加して残りは減少しています。というのも理学については、「理学科」として最初から分野を分けずに入学する大学が増えており、それらがすべてその他に分類されるためです。ですからそれでもなお増加している生物学の分野は実態としてはもっと増加していると考えてもよいと思います。

本来ならこの分野はもっと増えても良いと思いますが、手に職ではないと思われているんでしょうかね。

工学分野

次は工学分野です。こちらも大学が主流の分野ですが、そうはいっても短大にもあります。

分野大学
1989年
大学
2018年
増減比率短大
1989年
短大
2018年
増減比率
工学全体91,792 88,989 -2,803 97%10,379 1,315 -9,064 13%
機械工学18,776 14,727 -4,049 78%3,575 771 -2,804 22%
電気通信工学26,986 24,101 -2,885 89%4,193 280 -3,913 7%
土木建築工学18,341 13,400 -4,941 73%1,094 91 -1,003 8%
応用化学9,796 7,346 -2,450 75%397 35 -362 9%
応用理学1,071 2,052 981 192%0 0 0 0%
原子力工学299 111 -188 37%0 0 0 0%
鉱山学313 0 -313 0%0 0 0 0%
金属工学1,315 0 -1,315 0%44 0 -44 0%
繊維工学396 69 -327 17%67 0 -67 0%
船舶工学243 320 77 132%0 0 0 0%
航空工学694 564 -130 81%0 0 0 0%
経営工学4,973 1,492 -3,481 30%163 0 -163 0%
工芸学468 487 19 104%77 0 -77 0%
工学その他8,121 24,320 16,199 299%769 138 -631 18%

工学については大学も短大も減少しています。工学は多くの分野に分類されていますが、大学も短大も実際に学生がいる分野は限られており、その他だけが3倍に増えています。時代の変化で学科自体が変化していることが他の分野に比べても端的に出ています。

農学分野

分野大学
1989年
大学
2018年
増減比率短大
1989年
短大
2018年
増減比率
農学全体15,631 17,857 2,226 114%1,817 273 -1,544 15%
農学3,023 2,542 -481 84%981 237 -744 24%
農芸化学2,375 1,378 -997 58%125 36 -89 29%
農業工学938 565 -373 60%235 0 -235 0%
農業経済学1,310 558 -752 43%229 0 -229 0%
林学746 345 -401 46%0 0 0 0%
林産学77 0 -77 0%0 0 0 0%
獣医学畜産学2,251 2,135 -116 95%247 0 -247 0%
水産学1,672 1,601 -71 96%0 0 0 0%
農学その他3,239 8,733 5,494 270%0 0 0 0%

農学も工学と状況は似ています。短大の農学分野は絶滅寸前といってもいいかもしれません。

大学もいろいろな分野がなくなり、その他が大きくなっています。全体の半分がその他なんてもはや分類自体が成立しなくなっていると言っても過言ではありません。それもそのはずで、農学部だけだった時代と違い、生命とか生物といった名称の学部が多く出てきているからです。

保健分野

次は保健分野です。当たり前ですが、医学・歯学・薬学は大学にしかありません。ゼロと書いていますが、もともと存在しないです。

分野大学
1989年
大学
2018年
増減比率短大
1989年
短大
2018年
増減比率
保健全体21,629 71,461 49,832 330%9,833 3,470 -6,363 35%
医学7,636 9,002 1,366 118%0 0 0 0%
歯学2,955 2,268 -687 77%0 0 0 0%
薬学8,878 12,393 3,515 140%0 0 0 0%
看護学372 23,071 22,699 6202%4,740 1,475 -3,265 31%
保健その他1,788 24,727 22,939 1383%5,093 1,995 -3,098 39%

大学で激増しています。短大はもともと看護とその他にしかなかったのですが、どちらも減少しており、それ以上に大学が増加しています。

特に看護が6202%というわけのわからない数字になっています。その他(医療技術などが入ります)も1383%と保健が増えているのは主にこの2つの増加によるものだと言えます。そろそろ飽和するころではないかと思いますが、どこまで増えるのか気になるところではあります。

家政分野

次は家政分野です。家政といえば短大というイメージがありましたが、少し違うようです。

分野大学
1989年
大学
2018年
増減比率短大
1989年
短大
2018年
増減比率
家政全体9,181 18,025 8,844 196%57,750 9,985 -47,765 17%
家政学2,882 4,726 1,844 164%44,447 6,243 -38,204 14%
食物学2,464 10,097 7,633 410%8,125 3,262 -4,863 40%
被服学1,854 1,488 -366 80%5,178 480 -4,698 9%
住居学362 309 -53 85%0 0 0 0%
児童学1,619 1,268 -351 78%0 0 0 0%
家政その他0 137 137 0%0 0 0 0%

大学で倍増した一方で、短大は6分の1くらいまで減少しています。全体の数は4万人近く減少しており、家政系で学ぶ学生は大きく減少したことがわかります。表の都合で大学の家政その他の比率が0%となっていますが、計算できないという意味だと読んでください。

特に短大は家政学の分野に多く人がいましたが、それらの人たちがいなくなりました。人文科学の文学と同じ構造です。

一方で大学で増えているのは栄養学です。これは管理栄養士の養成課程を持つ学部が大きく増えたことが影響しています。管理栄養士がなければ家政系はもっと減っていたと推測されます。

教育分野

教育分野は短大が最も健闘している分野であると言えます。

分野大学
1989年
大学
2018年
増減比率短大
1989年
短大
2018年
増減比率
教育全体33,828 46,791 12,963 138%38,888 20,267 -18,621 52%
教育学4,793 9,998 5,205 209%0 0 0 0%
小学校課程10,033 3,018 -7,015 30%11,310 1,783 -9,527 16%
中学校課程4,289 166 -4,123 4%0 0 0 0%
高等学校課程16 0 -16 0%0 0 0 0%
特別教科課程970 0 -970 0%0 0 0 0%
中等教育学校課程0 968 968 0%0 0 0 0%
養護学校課程982 12 -970 1%0 0 0 0%
幼稚園課程847 21 -826 2%26,044 17,028 -9,016 65%
体育学6,046 9,666 3,620 160%1,534 266 -1,268 17%
特別支援教育課程156 288 132 185%0 0 0 0%
教育その他5,696 22,654 16,958 398%0 1,190 1,190 0%

ここも1989年が0で増減が0%となっていますが、計算できないと読んでください。また、以前は障害児教育や盲学校という表記がありましたが、それらは特別支援教育に入れました。

教育学部といえば小学校課程や中学校課程ですが、そのままの名称を持った学部はなくなり、教育学に分類されるようになっています。

短大についてはほぼ幼稚園課程のみが残っています。短大を出れば小学校の教員になれますが、その課程で学ぶ人が激減しています。

芸術分野

次は芸術分野です。

分野大学
1989年
大学
2018年
増減比率短大
1989年
短大
2018年
増減比率
芸術全体11,795 18,527 6,732 157%10,642 2,163 -8,479 20%
美術1,731 3,403 1,672 197%4,534 912 -3,622 20%
デザイン2,090 4,649 2,559 222%1,535 209 -1,326 14%
音楽5,354 3,819 -1,535 71%4,049 566 -3,483 14%
芸術その他2,620 6,656 4,036 254%524 476 -48 91%

芸術分野も大学は増加して、短大は大きく減少しています。特に短大は美術と音楽が主となっていましたが、そこは大きく減少しています。

大学は音楽だけは減少しています。芸術その他は新たな技術を活用した芸術などが出てきたことでこちらに分類されています。

その他の分野

最後にその他の分野です。大学については例えば東京大学の教養学部(文Ⅰとか理Ⅲなど)などはこちらに分類されています。また、上に書きましたが短大の教養は別分野ですが、その他に分類しました。

分野大学
1989年
大学
2018年
増減比率短大
1989年
短大
2018年
増減比率
その他全体11,795 57,571 45,776 488%9,288 5,300 -3,988 57%
教養学1,397 2,573 1,176 184%6,560 1,125 -5,435 17%
総合科学556 124 -432 22%0 0 0 0%
教養課程7,535 9,569 2,034 127%0 0 0 0%
人文・社会科学221 7,934 7,713 3590%0 0 0 0%
国際関係学1,338 3,997 2,659 299%0 0 0 0%
人間関係科学748 4,162 3,414 556%0 0 0 0%
その他その他0 29,212 29,212 #DIV/0!2,728 4,175 1,447 153%

その他分野の特徴はその他のその他です。とにかく分類できないものはここに入ることになります。これは文系から理系まで様々な分野が入るのでその他が何かを説明することはできません。できれば教育内容等を見てきちんと分類してもらいたいです。

まとめ

平成の30年間で大学と短大がどう変わっていったかのまとめです。

1.大学が増加しているのと対照的に短大は大きく減少した
2.短大は教育、特に幼稚園教諭だけが残っている状態
3.大学はその他のその他(分類できないもの)が増えている

以上参考にしてください。

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