大学・短大・専門学校の違いを語る際に、「誰が教員になれるのか?」という疑問は避けて通れません。そこで、高等専門学校も加えて、4つの学校種で教員資格がどう違うのか見ていきます。
教員資格は以下の法令で規定されています。
大学:大学設置基準
短大:短期大学設置基準
高専:高等専門学校設置基準
専門学校:専修学校設置基準
Contents
大学の教員資格
大学は大学設置基準の第14条から第17条にかけて教授、准教授、講師、助教、助手について規定されています。ちなみに上の職位は下の職位を包摂するので、例えば准教授の資格を持つものは講師、助教、助手になる資格を同時に持ちます。
職位 | 学位 | 専門職学位 | 教育歴 | 知識・経験 | その他 |
教授 | 博士 | 学位&実務 | 講師以上 | 特に優れた | 芸術、体育で特殊な技能 |
准教授 | 修士 | 学位のみ | 助教以上 | 優れた | 研究所等に在職&研究業績 |
講師 | 特殊な分野で教育能力 | ||||
助教 | 修士 | 学位のみ | 有する | ||
助手 | 学士 |
大学教員になる資格は主に4つあります。法律上はこれをすべて満たすわけではなく、どれか一つに該当すればよいということになります。
1つ目は学位です。これは教授=博士、准教授・助教=修士、助手=学士となっています。基本的に大学教員は研究能力が重視されるため、このように職位で分けられていますが、現実的には博士の学位が求められることが多いです。逆に博士だけは研究業績が博士に準じるという規定もあります。
同時に専門職学位も規定がありますが、こちらはほとんど修士相当なので、教授になるためには実務経験が必要となっています。
2つ目が教育歴です。ここは2段階下の職位以上の教育経験が必要とされています。
3つ目が専門知識・経験です。こちらは客観的な基準はなく、特に優れているか、優れている、有するという違いしかありません。
最後がその他の要素です。芸術・体育の特殊技能については教授のみに規定されています。また、研究所に在籍して研究業績がある場合も規定されていますが、こちらは准教授のみに規定されています。講師については、むしろ特殊な分野での教育能力ということだけしか明確な規定はありません。ここから講師はやや傍系の職位であることがわかります。
短大の教員資格
短大は短期大学設置基準の第23条から26条にかけて、大学同様に教授、准教授、講師、助教、助手について規定されています。大学同様職位は上の職位は下の職位を包摂します。
職位 | 学位 | 専門職学位 | 教育歴 | 知識・経験 | その他 |
教授 | 博士 | 学位&実務 | 講師以上 (短大、高専含む) | 特に優れた | 芸術で特殊な技能・技術 研究所等に在職&研究業績 |
准教授 | 修士 | 学位のみ | 助教以上 (短大、高専含む) | 優れた | |
講師 | 特定の分野で教育能力 | ||||
助教 | 修士 | 学位のみ | 有する | ||
助手 | 学士 |
基本的にはほぼ大学と同じです。しかし、微妙に大学と短大では異なります。大学と異なる点については赤字にしてあります。
違いの1つは教育歴です。大学は基本的に大学の教育経験が必要となりますが、短大の場合は短大と高専の経験も含まれます。
次に研究所等の在職経験は大学では准教授相当でしたが、短大では教授相当になっています。また、研究所等の中身ですが、大学では「 研究所、試験所、調査所 」とされていますが、短大では「 研究所、試験所、病院 」と微妙に異なります。
最後に細かいことですが、大学では講師の要件は「特殊な」となっていますが、短大では「特定の」となっています。短大については講師だけではなく教授、准教授についても特定の分野での知識・経験と書かれており、大学が「専攻で」となっていることと異なっています。
専門職大学・専門職短期大学(専門職短大)について
ここで出てきていない学校種として専門職大学・専門職短期大学(専門職短大)というものがあります。これは2019年4月に正式開学するものですが、法令上は専門職大学設置基準、専門職短期大学設置基準に既に定められています(2019年開学なので、法律ができているのは当然のことですが)。
ただし、基本的には専門職大学は大学と、専門職短期大学は短期大学と教員資格については変わりません。
何が違うかというと、教員の中で約4割が実務経験を有するものであること、さらにその実務経験を有する者のうち半分は研究能力(学位・教育歴・研究業績等)も併せ持つものであることが必要となります。
つまり、大まかにいえば、全教員の6割は大学・短大と同じ、2割は実務経験+研究能力、2割は実務経験というように分けられます。
高等専門学校の教員資格
高等専門学校(高専)は高等専門学校設置基準第11条から第14条に短大同様に教授、准教授、講師、助教、助手について規定されています。大学同様職位は上の職位は下の職位を包摂します。
高専は高校+短大相当の機関であり、それに沿った形になっています。
職位 | 学位 | 専門職学位 | 教育歴 | 知識・経験 | その他 |
教授 | 博士 | 学位&実務 | 講師以上 (短大、高専含む) | 特に優れた | 芸術で特殊な技能 研究所等に在職&研究業績 |
准教授 | 修士 | 学位のみ | 助教以上 (短大、高専含む) | 優れた | |
講師 | 高等学校の教諭の経歴&教育能力 | ||||
助教 | 修士 | 学位のみ | 有する | ||
助手 | 学士、短期大学士、準学士 |
ほぼ短大と同じですが、2つ異なる点があります。その部分は赤字にしてあります。
1つ目は、学位の部分で、助手の資格に短期大学士及び準学士が入りました。つまり、助手になるには短大卒以上でOKということです。
次に講師の資格が特定の分野ではなく高等学校の教諭の経験ということになりました。これは高専における講師の役割が高校段階の教育を期待していることを表しています。
専門学校の教員資格
最後に専門学校です。こちらは専修学校設置基準の第41条に規定されています。他にも高等課程、一般課程の教員の基準も記載してありますが、今回は専門学校の教員の基準なので、専門課程のみ記載します。他の学校種と異なり、専門学校には教員の資格として一つの基準しかありません。
職位 | 学位 | 専門職学位 | 教育歴 | 知識・経験 | その他 |
教員 | 修士 | 学位のみ | 高等学校で2年 | 特に優れた知識、技術、技能及び経験あり | 専門学校を卒業して、修業年限+当該業務で通算6年 学士は2年、短期大学は4年の教育、研究、技術の業務 |
まず、最初に書いていますが、職位がありません。つまり専門学校は研究ではなく教育機関を強調していることがわかります。
では、学位の資格がないかというとそうではなく、主に修士以上ですので、最大准教授クラスの学位があれば教員になれるということがわかります。また知識・経験についても大学と同様です。知識、技術、技能、経験と表現される文言は多いのでこの部分は広く適用されると推測されます。
他の校種と異なるものは教育歴とその他の部分です。教育歴に関しては高等教育(大学・短大・高専)ではなく高等学校の経験となっています。
最後にその他の部分ですが、こちらのキーワードは「6年」です。1つは6年の実務経験(専門画工の在学期間も含む)もう1つは6年の教育、研究、技術業務(こちらは大学短大対象で、在学期間も含む)です。まとめると、「大学・短大・専門学校に入学してから、それと関連する同一の業務に就き通算6年経過すること」となります。
教員資格まとめ
以上をまとめると以下の通りです。
1.大学・短大・高専と専門学校では教員資格が異なる
2.大学・短大・高専はほぼ同じだが、短大・高専は学校の特徴が出ている
3.専門職大学・専門職短大は大学・短大と基本は同じだが、4割が実務経験
以上を見て、同じ分野いくつかの学校種があって迷ったらどうするかということになりますが、特に学力的な側面が重視される分野であれば大学が、特に技術という側面が重視される分野であれば専門学校が有利になると思います。
以上参考にしてください。