大学・短大・専門学校の違い(教員数編)

今回は大学・短大・専門学校の教員数の規定について見てみたいと思います。

教員数については他の項目と同じく以下の法令に規定されています。
大学:大学設置基準
短大:短期大学設置基準
専門学校:専修学校設置基準

Contents

大学の教員数

大学については「収容定員」と「専任教員数」が規定されています。そこで、収容定員(最大数)を修業年限(4年、医学・歯学・薬学・獣医学は6年)で割った入学定員とST比(Student:Teacher比)を収容定員ベースと入学定員ベースで記載しました。

ST比の入学のところを見てもらうと大体1学年あたり教員が何人の学生の面倒を見る数字かというのがわかるかと思います。

収容定員がこれより少ない場合でも教員数は同じですので、その場合はST比が下がり、1人の教員が面倒を見る学生数は少なくなります。これで教育の質(あくまできちんと目が届くかという点だけですが)は上がります。一方で学納金収入は減るので、大学としての収支は厳しくなります。

また、規定上は収容定員の数値を上回る場合の基準がありますが、上回る場合には「400人に3人(薬学・獣医学は600人に6人)」という規定があるだけなので、分野ごとに基本となる数字だけが異なるのでこの部分に着目すれば、違いが分かります。

その他には同じ学部に学科が複数ある場合の基準もありますが、こちらは単一学科の場合よりも教員数が多くなるような基準になっているので、以下の表を見ていると最低基準がどのあたりになるかわかっていただけるかと思います。

分野収容定員入学定員専任教員ST比
(収容)
ST比
(入学)
文学、教育学・保育学6001501060.015.0
法学、経済学、社会学・社会福祉学8002001457.114.3
理学、工学、農学、薬学(薬科学)、
保健衛生学(看護以外)
4001001428.67.1
家政、美術、音楽4001001040.010.0
体育、看護学4001001233.38.3
獣医学、薬学6001002821.43.6
医学360601302.80.5
歯学36060754.80.8

人文科学系、社会科学系の分野のST比が高くなっていることがわかります。一方で理工学系、医療系はST比が低くなっていることがわかります。特に医学と歯学は非常に低いことがわかります。他にも医学と歯学の場合は附属病院も必要となるので、大変なコストがかかります。学費が高いことも納得です。

大学の場合は人文科学系と社会科学系のST比の高さは問題だと思います。もう少し基準となる教員数を増やさないと、ゼミ等の運営にも支障が出ますし、そもそも卒論やゼミが必修ではない学部も多いため、教育効果が上がりません。

人文科学系も昔は多く学科を持っていましたが、今は学科を1つにして専攻やコースなどの制度を活用している大学も多いです。この場合教員数が少なくて済みますが、教育効果が犠牲にされているのがわかりますね。

また、基準よりも多い場合には400人に3人という一律の基準があることも問題です。この規定だと定員が多ければ多いほど教員が少なくて済むという指向性を産んでしまいます。少なくとも基準と同じ比率で増えるようにしないといけません。

短大の教員数

短大は大学と異なり、「入学定員」と「専任教員数」が規定されています。そこで収容定員を計算してST比も出してみました。大学と異なりなぜ収容定員ではないのかよくわかりませんが、大学は4年と6年があるからでしょうか?それなら短大でも医療系は基本的に3年なんですけどね。

分野収容定員入学定員専任教員ST比
(収容)
ST比
(入学)
文学200100540.020.0
教育学・保育学10050616.78.3
法学、経済学、社会学・社会福祉学200100728.614.3
理学、工学、農学200100728.614.3
家政200100540.020.0
美術、音楽10050520.010.0
体育10050616.78.3
保健衛生学(看護、それ以外)300100742.914.3

大学と異なり収容定員の数が小さいことが短大の特徴です。それに伴い、全体的にST比も高くなっています。教育関係と体育関係は少ないですが。

短大は在籍期間が短く、財政的に非常に厳しいので仕方ない面もありますが、結果的にST比が上がり、教育の質が下がることになるのは避けてほしいところです。

専門学校の教員数

専門学校は大学・短大と異なり、収容定員の段階に分けて専任教員数が規定されています。イメージとしては対数のグラフを想像してもらえるとわかりやすいでしょうか。大学と異なり、増加分が段階的になっています。そこで、段階に分けて記載します。

また、入学定員ですが、専門学校は1年~4年まで修業年限が異なります。同じ収容定員でも1年制の場合は80人ですが、2年制では40人、4年制では20人ということになります。ですので、入学定員を規定することは難しいので収容定員のみ記載しています。

さらに分野ですが、2つにしかわかれていません。専門学校は「工業」「農業」「医療」「衛生」「教育・社会福祉」「商業実務」「服飾・家政」「文化・教養」の8つの分野がありますが、そのうち「工業~教育・社会福祉」までと「商業実務~文化・教養」の2つのグループに分かれています。

大きく分けると最初のグループは資格を取得するのがメインのグループ、後のグループはあまり資格にこだわらないグループとなります。

分野収容定員教員数ST比(収容
工業、農業、医療、衛生、教育・社会福祉80326.7
工業、農業、医療、衛生、教育・社会福祉200633.3
工業、農業、医療、衛生、教育・社会福祉6001442.9
商業実務、服飾・家政、文化・教養80326.7
商業実務、服飾・家政、文化・教養200633.3
商業実務、服飾・家政、文化・教養4001040.0

ST比自体は収容定員ベースなので、まあ大学・短大と同じくらい、分野によっては少なくなっています。

ただ、専門学校の場合も問題が2つあります。まずは教員の半分は専任でなくてもよいことです。もちろん3人以上と決まっていますが、収容定員200人までは専任教員は3人でよいということになります。

また、段階的に教員数を増やす基準が40人に1人⇒50人に1人⇒60人に1人と増えていくところです。この表には60人に1人のところは書いてありませんが、工業系では601人以上、商業実務系では401人以上の場合には60人に1人教員を配置すればよいことになります。

人数が多ければST比が上がるというのは大学も短大も同じですが、専門学校は別に「1つの授業は40人以下とする」という規定があります。まあ例外規定もあるわけですが、つまり人数が多くなればなるほど、例外的に大人数で授業をする可能性が高まってしまいます。

教員数のまとめ

教員数については、とにかくST比に気を付けるということ以外にないと思います。特に収容定員が大きい場合はどの学校種でもST比が高くなる傾向にあります。分野では人文科学系、社会科学系で注意しましょう。

教員では質の問題もあります。人数さえ揃っていればいいというものではありません。人数をチェックするのと同時に、教員の質についてもチェックしてみてください。大学の場合は教育もさることながら研究内容などもチェックポイントになります。

最後に、教員はずっとその学校にいるとは限りません。大学ならば引き抜きなどで移籍なんていうこともよくあります。途中で先生が移籍しても学生が移籍することはできません(大学院で進学し直すことはできますが)。

〇〇先生に習いたいということだけで選ぶのはやめましょう。

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