大学の学部はどう変遷したのか(1950年代後半)

今回も学校基本調査のデータをもとに大学の学部がどう変遷したのか見ていきます。今回は1950年代後半(1955年度~1959年度)です。

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1955年度

学部数588学部(前年比+7学部)

新しく設置された学部:美術工芸学部(金沢美術工芸大学)

なくなった学部:なし

この年はここまで増加してきた文学部が減少しました。一方で他の学部も大きな変動はなく全体としても7学部しか増加していません。1955年度はあまり動きのなかった年度と言えまs。

この年には金沢美術工芸大学に美術工芸学部が設置されました。この学部は後に設置された沖縄県立芸術大学とともに現在も引き続き設置されています。美術工芸学部は結果的に公立大学にのみ設置されている珍しい学部となっています。

学部名 学部数 前年比
総計 588 +7
文学部 67 -1
工学部 61 ±0
経済学部 55 ±0
医学部 48 +1
学芸学部 35 +1
農学部 34 ±0
法学部 33 ±0
教育学部 31 +2
商学部 28 ±0
理学部 22 -1

1956年度

学部数598学部(前年比+10学部)

新しく設置された学部:なし

なくなった学部:なし

この年も前年と比較して10学部しか増えておらず、また新しく設置された学部もなくなった学部もないため、比較的動きのなかった年度と言えます。学芸学部が数字を伸ば差ない一方で、法学部、農学部がそれぞれ3学部増加して学芸学部を追い越しました。

学部名 学部数 前年比
総計 598 +10
文学部 69 +2
工学部 62 +1
経済学部 55 ±0
医学部 47 -1
農学部 37 +3
法学部 36 +3
学芸学部 35 ±0
教育学部 29 -2
商学部 29 +1
理学部 22 ±0
薬学部 22 +1

1957年度

学部数610学部(前年比+12学部)

新しく設置された学部:社会福祉学部(日本福祉大学)

なくなった学部:なし

この年も大きな変動はないですが、法学部、商学部といった社会科学系の学部が少しずつ順位を上げています。それ以外でも文学部、工学部、理学部も増えており、メジャーな学部が伸ばした年度ではあると言えます。

この年には社会福祉学部が日本福祉大学に新しく設置されました。またその次の年の1958年には日本社会事業大学にも社会福祉学部が設置されており、福祉について大学が本格的に取り組み始めた年度だと言えます。「福祉」という名称も初めて用いられました。

社会福祉学部は2017年現在で27学部(最も多かったのは2004年の33学部)が設置されており、他の福祉の名称の学部に名称変更されるなどの影響でピークは過ぎたものの現在でも大きなウェイトを占めている学部であると言えます。

学部名 学部数 前年比
総計 610 +12
文学部 71 +2
工学部 64 +2
経済学部 57 +2
医学部 47 ±0
法学部 38 +2
農学部 37 ±0
学芸学部 34 -1
商学部 30 +1
教育学部 28 -1
理学部 24 +2

1958年度

学部数623学部(前年比+13学部)

新しく設置された学部:なし

なくなった学部:なし

この年は学部数こそ増えていますが、上位10学部は軒並み減少している。また新しく設置された学部もなくなった学部もなく、この年度も動きの少ない年だったと言えます。

上位の学部以外で動きのあった学部を見てみると音楽学部が前年の5学部(東京芸術大学、国立音楽大学【第一部・第二部】、武蔵野音楽大学【第一部】、神戸女学院大学)から9学部とほぼ倍になっています(設置されたのは上野学園大学、武蔵野音楽大学【第二部】、大阪音楽大学、相愛大学)。

翌1959年には武庫川女子大学、1961年に桐朋学園大学、1963年に東京音楽大学、エリザベト音楽大学と設置されており、音楽学部の大幅な拡大期の始まりの時期と言えます。ちなみに2017年現在音楽学部は25学部です。

学部名 学部数 前年比
総計 623 +13
文学部 70 -1
工学部 62 -2
経済学部 57 ±0
医学部 46 -1
法学部 38 ±0
農学部 36 -1
学芸学部 33 -1
商学部 32 +2
教育学部 28 ±0
理学部 24 ±0

1959年度

学部数643学部(前年比+20学部)

新しく設置された学部:なし

なくなった学部:なし

この年も学部種類の増減がなく、比較的落ち着いた年度だと言えます。ただし、この年は学部数は20学部増加とこの5年間で最も多く、その中でも工学部は前年と比較して7学部も増加しています。この後に始まる理工学系急増の始まりとなった年ともいえる。

学部名 学部数 前年比
総計 643 +20
文学部 70 ±0
工学部 69 +7
経済学部 59 +2
医学部 46 ±0
法学部 40 +2
農学部 36 ±0
学芸学部 32 -1
商学部 32 ±0
教育学部 28 ±0
理学部 25 +1

1950年代後半の特徴

1950年代後半の特徴は以下の通りです。

1.学部の増減はあまりない落ち着いた時期だった
2.とはいえ、福祉や音楽などの黎明期となった
3.最後に工学部が増えており、理工系増加の出発点である

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