卒業後の進路はどう変わったか(高校卒業編)

学校を卒業した後の進路の状況ですが、就職率はいろいろなところで問題にされます。しかし、進学も含めた進路やどういうところに就職しているかということについてはあまり触れられません。

そこで、学校基本調査の数字を元に長期の視点で進路状況がどのように変化しているのかを検証してみたいと思います。今回は高校卒業編です。

1970年度データから10年おきにどう変化しているかを見ていきます。念のために確認しておくと、1990年度は第二次ベビーブームのピークに近い年度、2000年度はバブル崩壊後に最も就職状況が厳しかった年度、2010年度はリーマンショック後に一時的に就職状況が悪化した年度。2020年度はコロナ直前でほぼ影響を受けていません。

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全体の推移

以下のグラフは高卒での卒業者数、大学進学率、短大進学率、専門学校進学率(1980年度以降)、就職率の推移です。

高卒者数は1990年度がピークとなっており、その減少しています(これはよく見る図です)。就職率は一貫して低下しており、2000年度以降は横ばいです。大学進学率は1990年度以降就職率と入れ替わるように上昇しています。短大は漸減、専門学校は漸増から横ばいとなっています。

ただ、高校には普通高校と専門高校、総合高校の3つがあります。専門高校は農業、工業、商業、家庭、水産、看護、情報、福祉、その他となっています。そこで外国語科や理数科などほぼ普通科と同じ内容を教えているその他を除いた合計を専門科として、普通科と専門科を比較してみます。さらには総合学科も並べてみました。

これら3つはかなり違っていると思います。普通科については全体と似たような傾向があり(昔は6割でしたが、現在は8割が普通科なので当然と言えば当然ですが)、唯一の違いといえば、全体では専門学校進学率と就職率が同じだったのが、普通科では専門学校進学率の方が高くなっており、より進学を志向していることがわかります。

一方で専門科については、普通科と全く違う傾向で、就職、専門学校進学、の順です。大学進学率も上昇傾向にありますが、上昇したのは2010年度以降となっており、率自体もそこまでではありません。ただし、専門科の卒業者数自体は普通科と異なり、減少傾向にあります。

最後に総合学科については数を伸ばしていますが、大学、専門学校、就職がほぼ同じ比率となっています。ちなみに総合学科は1990年代後半に制度化されたので、このグラフで反映されるのは2000年度以降となります。

このように高卒の進路は学科によって大きく異なることがわかります。では、長期的視点では減少している就職動向ですが、就職している職種や産業に変化はないかを見ていきたいと思います。

職業の変化

では高卒就職者の職業はどのように変化しているのか見ていきます。職業については年度ごとに項目がやや異なるので2020年度基準にしてあり、一部は一括しています(農林業と漁業など)。それをグラフにしたのが以下の図です。総計と同じように総計、普通科、専門科、総合学科の順に記載します。

総計を見てみると、一目瞭然で、事務従事者や販売従事者が大きく減少しています。一方で生産工程従事者は横ばいです。(2020年度は減少していますが、これは生産工程従事者から建設・採鉱従事者が分離してその他に入っているためで、それを含めると横ばいどころか比率が上がっています)。また、サービス職業従事者も増加傾向にありますが、事務従事者を補うほどではありません。

以上から言えることはかなり生産工程従事者に寄ってきているということです。

学科別にみてみると普通科では総計と比較してサービス職業従事者の比率が高く、生産工程従事者は早慶ほどは増えていません。一方で専門科を見てみると、生産工程従事者の比率が高くなっています。この要因は商業科の減少にあります。普通科については単体で計算していることで、就職者数自体は減少しているものの、その比率はそこまで変動していないと言えます。しかし、専門科についてはその中でも商業科が大きく減少しており、その上で事務従事者や販売従事者が減少していることで、より大きく変動していると言えます。

最後に総合学科ですが、2000年度以降ということもあり、あまり変動していません。しかし、就職者数自体は増加しているため、各職業への就職者数自体は増加傾向にあると言えます。

産業の変化

最後に産業の動向を見てみます。と言っても、産業と職業は関連性があるため、大きな違いはありません。グラフは以下の通りです。

職業別と同じように2020年度基準の表記ですが、サービス業については2010年度から大きく分類が増えました。ただ、高卒の場合はバラバラにすると一つ一つの比率が小さくなりすぎるので、サービス業としてまとめています。また、すでにまとめてしまった農林漁業以外で前年度で一度も5%に達していないものもその他にまとめています。

全体としては卸売業・小売業や金融業・保険業が減少しています。これは職業別で事務従事者が減少していることと連動していると考えられます。その分サービス業が増加していますが、それも減少傾向にあり、製造業や意外なところでは公務の比率が上昇しています。また専門科や総合学科では製造業が一貫して増加しています。

また、これはその他にまとめていますが、大学卒業者と全く異なるものとして情報通信業がほとんど存在しません。大学卒業者では1割ほどが情報通信業に就職しています。そういう意味では情報通信業は高等教育を受けた人向けの産業であると言えます。

まとめ

高卒の進路状況をまとめると以下の通りです。

1.高卒後は就職から進学に変化している。ただし、それは普通科のみに見られる。
2.専門科においては商業科の減少が全体の動向に影響を与えている。具体的には事務従事者や卸売業・小売業に就職する比率が低下している。
3.その分比率が高くなっているのが製造業を中心とした生産工程従事者である。
4.ただし、情報通信業については高卒者への門戸は閉ざされている。

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