共通テストの難易度が上がったのに平均点も上がったことへのマイナス思考の仮説

先日初めて行われた大学入学共通テストの集計結果が出ました。

今回の共通テスト、実施直後の予備校等の各社の講評は概ね「難化した」というものがほとんどでした。そのため平均点は下がると思われたのですが、その予想に反して平均点は上昇しています。

その要因は何でしょうか?受験生が新しい学習指導要領に対応した「新しい」学力を身につけた結果平均点が上がったのでしょうか?もちろんそういう側面もあるのかもしれませんが、ちょっと気になる点があるので、ここではマイナス思考でその要因を考えてみたいと思います。

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平均点はどうなったのか?

2020年2月7日現在、中間集計しか出ていませんが主要の国語、英語、数学の100点満点換算の平均点の前年比は以下の通りです。

国語 58.75点(昨年比-0.91点)

英語(リーディング) 58.81点(昨年比+0.66点)

数学Ⅰ・A 57.68点(昨年比+5.80点)

数学Ⅱ・B 59.93点(昨年比+10.90点)

これを見ると、平均点が上昇したのは主に数学、特に数学Ⅱ・Bであることがわかります。

ってことは今年の受験生は数学の成績が良かったんでしょうか?もしそうなら喜ぶべきですが、問題を見てみるとどうも違うようです。

数学の出題方式が大きく変わった

これまでのセンター試験の数学の問題を見た方はお分かりかと思いますが、これまでの数学の出題については、小問集合は別として、一連の問題についての解法の流れの文章が記載してあり、その流れに沿って途中にある数式等を埋める形式の問題がほとんどでした。例えば以下のような感じです。

(ア)x+(イ)

というものがあれば、アとイに当てはまる数字をマークして、両方とも合っている場合に得点が入るというものです。

こういう形式の場合、ある程度は絞れると思いますが、アは2~9の8択(0はないし、1も省略するし)、イも1~9の9択(0だとおかしい)なので当てずっぽうだと8×9の72分の1ということになります(実際には2とか3とかが多くなるんですが)。

しかし、今年度の問題については下に選択肢の集合が用意され、そこから選ぶという形式の問題が多く出題されていました。

センター試験の時代からそういう形式の出題が多くなっていましたが、共通テストになって大きく増加しました。

そこで下から選ぶ方式の出題がどれくらいの割合で出されているのか、設問数を調べて配点を合計してみました。

数学Ⅰ・Aから見てみます。

2020年度は

 第1問  6点分

 第2問  15点分

 第3問  4点分

 第4問  なし

 第5問  4点分

ということで第3問~第5問は2問選択なので選択方法によって、25点~29点分が選択式でした。

それが

2021年度は

 第1問 14点分

 第2問 20点分

 第3問  6点分

 第4問  2点分

 第5問  2点分

ということで2020年度と同様の選択方式なので、38点~42点分となります。これで10点分くらい増加していることがわかります。

次に数学Ⅱ・Bです。

2020年度が

 第1問 2点分

 第2問 なし

 第3問 なし

 第4問 2点分

 第5問 なし

と最大4点分しかありません。

それが2021年度は

 第1問 13点分

 第2問  8点分

 第3問 12点分

 第4問  2点分

 第5問  8点分

ということで、選択方式によって23点~41点分が選択式となっています。選択問題によっては30点分くらい増加しています。

選択式は何が問題?

まあなんとなくわかると思いますが、選択式の場合は選択肢の中に間違いなく答えがあります。もちろんそれが4択なのか、5択なのか、6択なのか数は違いますが、数字を完全一致で入れることより圧倒的に正解率が高くなります。しかもこれまでの方式だと最初の問題で躓くとその下の問題も全滅という可能性がありますが、選択肢式の場合はそれぞれが独立しているので上は間違えたけど、下の問題は正解したということがまま起こります。

で、これが平均点の増加分と符合するんです。数学Ⅰ・Aと比較して数学Ⅱ・Bの方が選択式の配点数が大きく増加していました。通常数学Ⅰ・Aは高校1年生の範囲、数学Ⅱ・Bは高校2年生の範囲です。数学は積み上げ型なので数学Ⅰ・Aがわからないと数学Ⅱ・Bがわからない仕組みになります。そのため通常数学Ⅱ・Bの方が平均点は低くなることが多いです。

それが今年は数学Ⅱ・Bの方が平均点が高くなっています。もちろん問題が簡単だった可能性もありますが、解法がわからなかった受験生が当てずっぽで解答を書いたとしたら?今年は昨年より当たりやすい状況が影響した可能性が大きいです。

つまり何が言いたいかというと、「受験生の数学の力を本当に反映した結果になったのか?」ということです。

特に今年はコロナ禍で国立大学の中でも二次試験を取りやめた大学がいくつかあります。そんな中当てずっぽで高い点を取った可能性がある受験生が混ざっていたら?特に理系の入学選抜は果たして機能しているといえるでしょうか?一部講評では今年の数学の問題は考えさせる問題が増えたとありましたが、却って考えない受験生が点を取った可能性すらあります。

国立大学が二次試験をやらないことについてはまた改めて考えてみたいと思います。

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