最近の新型コロナウイルスへの対策としてオンライン授業が注目されています。実際にいくつかの大学では前期授業をすべてオンラインにすると宣言したところもあります。
そこでオンライン授業について思うところを書いてみようと思います。
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オンラインの形態
その前にオンライン授業の形態について整理してみたいと思います。
オンデマンド方式
これは事前に収録された動画等を視聴することで学習を進めていくタイプです。
予備校などでは取り入れられていますが、実際に大学でも導入されているところがあります。
以前取り上げた早稲田の政治経済学部も統計学の授業はオンデマンド科目となっています。
正直この方式だけで授業が進められる場合は、通信制大学や放送大学とあまり変わらないということになり、一般的な大学の授業としては不適合でしょう。
テレビ会議システムを利用した授業
近年注目を浴びている形式としては、こちらの方式があります。
コロナウイルス関連ではZoomが利用枠を広げたことで注目されたりしています。
また、コロナウイルスの前から注目されていたミネルバ大学などもテレビ会議システムを使用した画期的な授業形態であるということが大きな特徴となっています。
実際この方式に期待を寄せている関係者もいると思いますし、理屈の上ではどこにいても双方向の授業が実施できる理想的な仕組みです。
ミネルバ大学で見落としてはいけないこと
人によっては今後ミネルバ大学のような授業にすればよいと考えられる方もいるかもしれません。
しかし、ミネルバ大学で最も大事なものは「リアルな体験」なのです。
実際授業はオンライン上で完結しますが、同級生は常に近くにいます(寮生活)。つまり同級生同士はリアルに協同して学習を進めることになります。また、集団で世界を回ることで、世界のリアルを学習することも大きな目的となっています。
つまり、今の形態のままでオンライン授業で完結させようという発想は裏のメカニズムを無視した片手落ちの発想なのです。
現在の授業でも単一の講義であとは試験で判定しておしまいという授業はたくさんあります。それがオンラインに置き換わっただけで何の進歩もありません。むしろ、教室の授業で行われていた共同作業ができなくなる分、質は下がってしまうでしょう。
理系・芸術系の大学や専門学校はそもそも難しい
百歩譲って「一般(経済学部などをイメージしています)」の大学の授業であれば、オンラインの授業に、オンラインのチーム作業などを組み合わせれば何とかなるのかもしれませんが、実験がある理系の学部や実技のある芸術系の学部は教室で作業する必要性が生じます。
美大の授業で自分の作品をパソコンの画面に映し出して指導を受けるなどということは不可能でしょう(もちろんグラフィックデザインなどコンピュータ上でのデザインならば可能かもしれませんが、作業中の指導は難しいでしょう)。
ましてや専門学校に至っては実務に向けての職業訓練の授業であるため、授業の多くが実習・実技でありオンラインにそもそもなじみません。(もちろんIT系の学校などはパソコンとネット環境があれば完結する部分もあるかもしれませんが、それでもハードの授業になると現物が必要になります)
今後は組み合わせが求められる
今回の件でリスクヘッジの意味合いも込めてオンライン授業は拡大するのは間違いありません。
ただし、方向性としては授業は三極化していくのではないかと思います。
理系の大学を例にとって考えてみましょう。
オンデマンドで十分なもの
数学や物理学など基礎科目と呼ばれるものはここに入るでしょう。そもそもが高校の授業の延長の要素もありますし、むしろ情報伝達力の高い教員が行った授業を全員が履修するほうが効果は高いでしょう。
そのほかの教員は演習などを通じて理解度を確認すればよいということになります。
これらの科目は重要ではありますが、かける労力を最小限にして上の2つの授業に力を入れていくことが必要になります。
対面でやらなければならないもの
実験などがこの中に入ってくるでしょう。これについては対面授業が避けられません。ですのでこの部分は従来通りの授業が行われるものと考えられます。
オンラインで実施するもの(この部分が多様化)
専門科目の講義などがこれに該当すると考えられます。
そしてこの部分はさらに細かく分けられると思います。
例えば著名な教授の講義であれば、教室では席数に限りがありますが、オンラインであればちょっとやそっとの人数ではパンクしません。講義回数が15回ならばそのうち5回はオンラインで講義して、残りの10回は個々の教員による対面方式の授業などということも可能になります。
また、インターンシップや海外留学との組み合わせで現地にいながらにして単位が取得できるという使用方法もありかもしれません(文系であればミネルバ大学のようなことも可能ではあります)。
教育方法を作り直すチャンス
今回の件は非常に厳しい状況ですが、これを機に教育方法が変わり、教育効果が上がることを期待します。