文学部や人文学部は近年減少傾向にありますが、それでも学部上位トップ10に入る学部です。そのカリキュラムについて考えてみます。
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文学部の基本構造
学校基本調査などの統計調査などでは以下の通り分類されます。
文学分野:日本文学や英米文学など
史学分野:日本史、東洋史、西洋史、考古学など
哲学分野:哲学、宗教学、美学など
その他分野:心理学、社会学など
その他についてはこれ以外にも教育学や、マスコミ学(メディア学)、図書館学など人文の分野から派生したものが入りますが、近年はディシプリンの違いから教育学部や心理学部など独立の学部となっていることが多いです。
一方で史学部や哲学部という形で文学、史学、哲学が独立することはほとんどありません。(佛教大学の歴史学部などはありますが)
哲学は教養学
そもそも哲学部となると、大学の歴史をさかのぼると中世大学のリベラルアーツの学部、今の日本で一番近いのは教養学部(昔であれば学芸学部)ということになります。
つまり、哲学の分野は学問的な基礎に当たる分野であると言えます。
特に哲学は疑問をもつことで真実に近づくことを考える分野でもあります。どの分野を学ぶにしても基礎となる考え方を学ぶ分野なのです。
哲学は文学だけにとどまらず、すべての分野で必修にすべき分野です。
文学は文化学、歴史学
文学と聞くと文学作品を研究すると考えてしまいます。
では文学を研究するということはどういったことか考えてみます。
文学作品を研究するには、最低限該当する言語(英米文学なら英語、フランス文学ならフランス語)を習得することが必要なことは当然かと思います。それ以上にその作品の背景にある文化を習得することも必要となります。
つまり文学≒文化を学ぶことが必須です。
また、文学を学ぶときに歴史的な背景を理解していることも必要となります。
重層的に学ぶことが必要
つまり、一口に文学といっても多様な要素が関連しており、重層的に学ぶことが必要であることがわかると思います。
よって、文学部には文化・歴史・哲学の視点から学ぶカリキュラムが求められます。
実際のカリキュラム
以下は文学系の学部のカリキュラムを学部・コース・専修までみて、先ほどの文学(文)・歴史(史)・哲学(哲)のどの範囲が含まれるかを示したものです。
分類 | 全体 | 国立 | 公立 | 私立 |
文・史・哲 | 75 | 29 | 3 | 43 |
文・史 | 20 | 1 | 2 | 17 |
文・哲 | 11 | 0 | 1 | 10 |
史・哲 | 1 | 0 | 0 | 1 |
文のみ | 58 | 0 | 7 | 51 |
哲のみ | 3 | 0 | 0 | 3 |
史のみ | 1 | 0 | 0 | 1 |
その他 | 5 | 0 | 0 | 5 |
合計 | 174 | 30 | 13 | 131 |
文・史・哲が揃うのは半分以下
こうしてみると文学や人文の名称がつく学部174学部のうち、実際に3つの分野が揃っていると言えるのは半分以下の75学部となります(もちろん研究室単位で存在はしていると思いますが、その規模は小さいと思います)。
哲学については、美学なども含むため、美学から派生したメディア学などかなり広く取っています。それでも半分程度しか学べる学部がないことになります。
逆に文学の分野はほとんどの学部で学ぶことができますが、日本文学・英米文学にかなり偏っており、それ以外の文学を学べる分野となるとかなり少なくなります。
国立大学は揃っているが・・・
国立大学は歴史的な積み上げもあり、基本的にはこれらの3分野を揃えています。
しかし、現状では縮小傾向にあります。以前は哲学科、史学科、文学科という形で分かれていることが多かったのですが、現在では人文学科などの1学科でコース制や専攻制を採用している大学のみです。
また、人文社会学部や法文学部などの複合学部の形で残っている大学もあります。この場合は入学定員数が単体の学部の場合と比較しても少なくなっています。
学生が少ない=教員数も少ない=学べる分野に制限があるということで、分野によっては不足する場合もあります。
文学部選びのポイント
入学先を選ぶなら
上に書いたように基本的には文学・史学・哲学の分野が揃っている大学を選ぶことをお勧めします。また、入学後はこれらの分野を学んでから選択できるとなおよいと思います(こうなると国立大学と早慶ということになってしまいますが…)。
そうでない場合でも、哲学的要素が入っている大学を選ぶことをお勧めします。とにかく文学部は「文学勉強しました」をいかに「文化とは何か」などに昇華できるかが良い学部の条件だと思います。
大学に望むこと
哲学を拡充してくれとしか言えません。むしろ全学的に学ぶべき項目だと思います。