以前の記事で大学の国公私立別に家庭年収がどう推移しているのかを見てみましたが、それ以前に学校種別の家庭年収の違いを見てみたいと思います。
データは同様に日本学生支援機構の学生生活調査です。
2018年度の調査から高専や専門学校も対象となりました。そのため高専と専門学校は年次推移を把握することはできませんが、単年度の学校種ごとの違いを見ることができます。
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大学とそれ以外に分かれる
平均年収を学校種別に分けたものが以下の表です。学部は大学の学部、修士は修士課程、博士は博士課程、専門職は専門職課程を指します。
学校種 | 平均(万円) |
学部 | 862 |
修士 | 869 |
博士 | 794 |
専門職 | 842 |
短大 | 640 |
高専 | 708 |
専門学校 | 629 |
これを見ると大学が高くなっており、それ以外(短大、高専、専門学校)が一段低くなっていることがわかります。その差は200万円以上になっている学校種もあり、大きな差になっていることがわかります。
ちなみに以前の記事で国公私立別の家庭年収を見た際に、公立大学だけは750万となっており、ちょうど大学とそれ以外の中間に位置しています。公立大学は地方に多く設置されていることからこのような位置づけになっていると推測されます。
比率はどうなっているのか?
では年収の比率はどうなっているのでしょうか?各学校種で比率をグラフ化したものが下の図です。
家庭年収1000万以上の比率を見てみると、明らかに大学でその比率が高いことがわかります。一方で短大、専門学校については1000万円以上の層は非常に少ないです。ただし高専だけは平均的にかなり散らばっていることがわかります。
この要因をどこに探ればよいでしょうか?1つはもちろん学力と年収の相関です。年収が高い家庭ほど学力も高く、その結果大学進学比率が高くなるという結果です。
また、地域的な問題も関係していると思います。先ほどの公立大学の例でいえば地方出身者が多いことから年収が下がるという結果になっています(国立大学だけは例外的に家庭年収が高くなっていることは以前の記事に書きました)。
高専はその2つの影響を受けているものと考えられます。学力の高い層が進学するけれども地方に多いことから年収の層が広がっています。
博士課程…
そしてもう一つ気になるものとして博士課程の年収400万円未満の層がどの学校種と比較しても最も高くなっていることが特徴として挙げられます。
少し前に高学歴ワーキングプアとかホームレス博士などという言葉が新書で踊っていましたが(両方とも同じ作者による言葉ですが)、実際に博士課程在籍時点から経済的には厳しい層が一定数いることがわかります。(注意書きには「配偶者ありは含まない」とだけあるので、年齢的に親の保護下から独立したとみなして自分のアルバイト等での年収を回答した可能性はありますが)
2020年度も実施される
新型コロナウイルスに翻弄された2020年度ですが、この年も調査が実施されます(2020年11月実施)。ひょっとしたらこの数字に大きな変化があるかもしれません。
結果が公表されるのがこれまでの傾向からすると2022年4月~6月あたりになると思うので、もう少し後になりますが注目すべき事項だと思います。