東大や京大など有名な大学にどの地域から入学しているのか気になりますよね。特に最近は「東大が関東ローカル化している」とか「京大に関東からの入学者が増えた」とか言われています。
もちろん週刊誌の高校別合格者などでわかるところも多いですが、なんと大学改革支援・学位授与機構のサイトでは「学校基本情報」として国公立大学のデータが細かく公開されています。
そこに各大学の出身県別の入学者数という項目があります。これ、学校基本調査の基になっている数値ですが、学校基本調査は都道府県別なので、国公立大学が複数ある都道府県は合計値しかわかりません。また、学部別の数値もわかりません。しかしこの学校基本情報にはそれらの情報が掲載されています。
そこで、それらの数値を使って東大・京大の地域別入学状況を細かく見てみようと思います。
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2021年度の地域別入学者は?
下の表は東大と京大の地域別入学者です。都道府県別にすると情報量が大きくなりすぎるので、地域単位でまとめました。
地域 | 東大 | 京大 |
北海道 | 1.4% | 1.7% |
東北 | 2.7% | 1.3% |
北関東 | 4.0% | 2.1% |
首都圏 | 52.0% | 12.8% |
甲信越 | 4.2% | 4.3% |
東海 | 7.9% | 12.5% |
近畿 | 14.0% | 49.6% |
中国 | 3.0% | 4.9% |
四国 | 1.8% | 2.1% |
九州 | 6.9% | 6.3% |
沖縄 | 0.3% | 0.2% |
入学者数 | 3,130 | 2,909 |
これを見ると、ちょうど東大と京大は地域的に対象になっているようです。具体的にはお膝元の首都圏(東大)、近畿(京大)がちょうど半分くらい。2番目に多いのがお互いの地域である近畿(東大)、首都圏(京大)。
あとは地域的に近いほうに行く傾向がありますが、九州だけは東大志向が強いようです。東大に行くにも京大に行くにも同じ時間がかかるならってところでしょうか。
経年で見てみると
首都圏の集中が一段落した東大
東大 | 首都圏 | 近畿 |
2012年度 | 50.3% | 12.4% |
2013年度 | 51.3% | 11.3% |
2014年度 | 51.2% | 12.4% |
2015年度 | 54.1% | 12.0% |
2016年度 | 54.1% | 11.3% |
2017年度 | 52.7% | 12.1% |
2018年度 | 54.4% | 11.2% |
2019年度 | 54.6% | 11.7% |
2020年度 | 52.3% | 12.5% |
2021年度 | 52.0% | 14.0% |
これは東大の首都圏と近畿の出身者の推移です。2015~2019年度にかけて東大の首都圏比率は54%前後で推移していました。それ以前は50~51%で、2020年度以降は52%前後です。ここ2年は少し首都圏比率は下がっているといえます。
しかし、その分は近畿からの入学者比率の増加分のようです。特にここ数年は受験業界をにぎわしている西大和学園の合格者増が大きく寄与しているようです。
首都圏の増加傾向が続く京大
京大 | 首都圏 | 近畿 |
2012年度 | 8.2% | 52.7% |
2013年度 | 8.7% | 51.5% |
2014年度 | 10.2% | 49.8% |
2015年度 | 11.1% | 50.0% |
2016年度 | 11.8% | 49.5% |
2017年度 | 12.3% | 46.9% |
2018年度 | 12.3% | 49.7% |
2019年度 | 13.0% | 46.8% |
2020年度 | 12.5% | 49.7% |
2021年度 | 12.8% | 49.6% |
一方で京大はむしろ近畿比率は横ばいから低下傾向にあり、その分首都圏比率が高まっています。2012年当時と比較すると5ポイントほど首都圏比率が上昇しています。一学年が約3,000人ですから5ポイント分ということは150人くらい首都圏出身者が増えているということになります。数値に直すと結構な規模になることがわかります。
学部別に違いは?
東大は文系・理系の区分しかないが
学部名 | 首都圏率 |
文科系 | 55.2% |
理科系 | 49.7% |
東大はご存じのように学部別に入試を行っておらず、文科Ⅰ類~Ⅲ類、理科Ⅰ類~Ⅲ類という区分で入試が行われています。この調査への回答でも文科系と理科系の2区分でしか回答がありませんでした。
それしかないですが、この2つの首都圏比率を見てみると、文科系のほうが首都圏比率が6ポイント程度高いことがわかりました。裏を返すと理科系はより全国から入学者を集めているということになります。
細かい地域別の数値は載せていませんが、東北や北関東などはどちらかというと文科系の比率が高く、東海以西では理科系の比率が高くなっています。
京大で近畿比率が低い意外な学部
学部名 | 近畿比率 |
医学部(6年) | 67.9% |
薬学部 | 53.6% |
工学部 | 53.2% |
経済学部 | 51.2% |
医学部(4年) | 51.0% |
法学部 | 50.4% |
農学部 | 50.3% |
教育学部 | 46.9% |
文学部 | 42.2% |
理学部 | 38.8% |
総合人間学部 | 37.1% |
京大は学部別入試なので学部別数値があり、なおかつ医学部については医学科とそれ以外の学科(看護・リハビリテーション)も分けてあります。
それらの学部を近畿比率の高い順に並べてみました。これを見ると学部によってかなり近畿比率が異なることがわかります。
総じてみると、理系の学部が近畿比率が高く、文系の学部が低くなっています。これは東大とは逆の傾向であり、理系の優秀層が東大に流れているのかと思わせる結果でもあります。特に医学部や薬学部などは教育内容の違いがないため、近いほうでいいかという志向があるのかもしれません。(京大に入ること自体難しいですから選べる人がいるのかは疑問ですが)
しかし、その傾向に逆行する学部があります。それが理学部です。理学部の近畿比率は38.8%と非常に低くなっています。やはりこれは京大のノーベル賞の系譜のなせる業でしょうか。
また、京大にしかなくかつ京大らしい学部が総合人間学部です。もともとの由来は旧教養部の改組から生まれた学部ですが、その名前と違って何でもありの学部になっています。そのあたりの魅力が近畿圏外から入学者を呼び込んでいるのかもしれません。