今回も学校基本調査の数値をもとに大学の額がどう変遷していったのを見ていきます。今回は1990年代前半(1990年度~1994年度)です。この時期は第二次ベビーブームの18歳人口がピークを迎えた時期に当たります。
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1990年度
学部数1,310学部(前年比+22学部)
新しく設置された学部:総合政策学部、環境情報学部(以上慶應義塾大学)、人間社会学部(日本女子大学)、情報科学部(中京大学)、造形芸術学部(名古屋造形学部)
なくなった学部:なし
学部の増加の勢いは少し落ちたものの、それでも22学部が増加しました。特に法学部がこの時期増加しています。
この年の大きなトピックはやはり慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパスの設置とそれに伴う総合政策学部及び環境情報学部の新設でしょう。慶應義塾大学が設置したことにより、この後この2つの学部は至る所で(雨後の筍のように)新設されていきます。
もう一つ注目すべき学部が中京大学に設置された情報科学部です。これは中京大学がとか情報がとかに限ったことではありませんが、別の大学に同じ分野で「〇〇学部」と「〇〇科学部」が設置されているものが多くあります。しかし「科(学)」という名称が入ることによる学部の違いはそれほど明確ではありません。他の大学との差別化という意味で使用されている可能性が高く、それが学部の種類が増えていく要因ともなっています。
新しく使用された言葉は「総合」「政策」です。政策については政治や行政という言葉が既に使用されており、類語に近いものです。
学部名 | 学部数 | 前年比 |
総計 | 1,310 | +22 |
文学部 | 149 | -1 |
経済学部 | 145 | +1 |
工学部 | 133 | +2 |
法学部 | 107 | +2 |
医学部 | 79 | +1 |
教育学部 | 61 | -1 |
商学部 | 51 | +1 |
理学部 | 47 | +1 |
薬学部 | 45 | -1 |
経営学部 | 43 | +1 |
1991年度
学部数1,335学部(前年比+25学部)
新しく設置された学部:社会情報学部(札幌学院大学)、システム工学部(芝浦工業大学)、開発工学部(東海大学)、生命理工学部(東京工業大学)、医用工学部、保健衛生学部(以上鈴鹿医療科学大学)、医療福祉学部、医療技術学部(以上川崎医療福祉大学)
なくなった学部:なし
この年は新しい学部が8つもできた年となりました。このあたりの時期にできた学部は3つの特徴を持っています。それは(1)工学部と医療系学部が多いこと(「医療」という名称は初めて使用されました)(2)初めてカタカナ学部が出てきたこと(3)大学新設に伴い新たな学部名が考案されたことの3つです。
今はかなり多くあるカタカナ学部ですが、この年に初めてできました。芝浦工業大学は既に工学部があり、別キャンパスに同種の学部を設置する際に識別のために使用されました。
なお東京工業大学の生命理工学部は前年の1990年に設立されていますが、6月に設置されたため学部数に反映されたのは1991年となっています。
この年に新しく使用された言葉は「システム」「開発」「生命」「医用」「医療」「技術」です。
学部名 | 学部数 | 前年比 |
総計 | 1,335 | +25 |
文学部 | 150 | +1 |
経済学部 | 147 | +2 |
工学部 | 136 | +3 |
法学部 | 109 | +2 |
医学部 | 78 | -1 |
教育学部 | 62 | +1 |
商学部 | 51 | ±0 |
理学部 | 47 | ±0 |
経営学部 | 46 | +3 |
薬学部 | 45 | ±0 |
1992年度
学部数1,368学部(前年比+33学部)
新しく設置された学部:不動産学部(明海大学【第一部・第二部】)、人間学部(天理大学)、人間生活学部(藤女子大学)、国際経済学部(麗澤大学)、デザイン工学部(東北芸術工科大学)、日本文化学部(明星大学)
なくなった学部:なし
新たな学部がこの年も6学部増加しました。これまでの人間、国際、文化という名称に加えて、「不動産」、「デザイン」という名称の学部が登場しました。不動産学部は現在でも明海大学のみに設置されています。人間生活学部は2017年現在で9学部まで増えています。
デザイン工学部が設置された東北芸術工科大学は山形県初の私立大学です。それまで山形県には私立大学がありませんでした。デザイン工学部はその後芝浦工業大学、法政大学及び大阪産業大学にも設置されました。
国際経済学部は後に浜松大学にも設置されましたが、両大学とも現在は名称変更しており、現在では存在しない学部となっています。
日本文化学部は最初に設置された明星大学にはすでになくなっており、愛知県立大学のみに設置されています。
この年に新しく使用された言葉は「不動産」「生活」「デザイン」「日本」です。
学部名 | 学部数 | 前年比 |
総計 | 1,368 | +33 |
文学部 | 151 | +1 |
経済学部 | 148 | +1 |
工学部 | 138 | +2 |
法学部 | 111 | +2 |
医学部 | 79 | +1 |
教育学部 | 62 | ±0 |
商学部 | 52 | +1 |
理学部 | 48 | +1 |
経営学部 | 46 | ±0 |
薬学部 | 45 | ±0 |
1993年度
学部数1,404学部(前年比+36学部)
新しく設置された学部:デザイン学部(岡山県立大学、東亜大学)、保健医療学部(札幌医科大学)、保健福祉学部(岡山県立大学)、環境学部(広島工業大学)、看護福祉学部(北海道医療大学)、経営経済学部(青森公立大学)、総合人間学部(京都大学)、コンピュータ理工学部(会津大学)、発達科学部(神戸大学)、生物理工学部(近畿大学)、人文・社会学部(札幌国際大学)、スポーツ健康科学部(順天堂大学)
なくなった学部:なし
この年は経済学部が5学部増加し、学部数1位になりました。一方文学部は増えていませんが、人文学部が5学部増加しています。「文学」よりも「人文学」が主流になりつつある時期です。
この年はここまでで最大の12学部が新設されました。この年の特徴は3つあります。(1)国立大学の教養部の学部化(京都大学、神戸大学)(2)公立大学の設置に伴う新しい名称の考案(札幌医科大学、青森公立大学、会津大学、岡山県立大学)(3)2つの言葉を「・」でつなぐ並列学部の3つです。
この年に設置された学部では2017年度現在で保健福祉学部が7学部に、デザイン学部が10学部に、スポーツ健康科学部は12学部に増加、保健医療学部に至っては36学部まで増えています。その他の学部は3学部程度までしか増加していません。
この年に新しく使用された言葉は「コンピュータ」「発達」「スポーツ」です。
学部名 | 学部数 | 前年比 |
総計 | 1,404 | +36 |
経済学部 | 153 | +5 |
文学部 | 151 | ±0 |
工学部 | 138 | ±0 |
法学部 | 112 | +1 |
医学部 | 79 | ±0 |
教育学部 | 62 | ±0 |
商学部 | 53 | +1 |
理学部 | 48 | ±0 |
経営学部 | 48 | +2 |
薬学部 | 45 | ±0 |
1994年度
学部数1,465学部(前年比+61学部)
新しく設置された学部:情報文化学部(名古屋大学、新潟国際情報大学)、生活環境学部(奈良女子大学、武庫川女子大学)、生命科学部(東京薬科大学)、総合情報学部(関西大学)、国際経営学部(名古屋外国語大学)、文化情報学部(駿河台大学)、医療衛生学部(北里大学)、政策科学部(立命館大学)、総合管理学部(熊本県立大学)、経営科学部(大阪学院大学)
なくなった学部:なし
過去最多の61学部が増加しました。特に経営学部は商学部とほぼ同じ数まで増加してきました。
この年度も10学部が新設されています。前年同様国立大学教養部の学部化や公立大学の設置も続いています。このあたりから既存の名称の組み合わせが多様化してきます。「情報」や「文化」などがその対象としてよく使用されています。
この年に設置された学部では2017年現在で総合情報学部が6学部に、生命科学部が7学部に増加しているが、それ以外は多くても4学部となっています。
この年に新しく使用された言葉は「管理」のみです。
学部名 | 学部数 | 前年比 |
総計 | 1,465 | +61 |
経済学部 | 157 | +4 |
文学部 | 151 | ±0 |
工学部 | 140 | +2 |
法学部 | 116 | +4 |
医学部 | 79 | ±0 |
教育学部 | 62 | ±0 |
商学部 | 53 | ±0 |
経営学部 | 52 | +4 |
理学部 | 49 | +1 |
薬学部 | 45 | ±0 |
1990年代前半の特徴
1990年代前半の特徴は以下の通りです。
1.カタカナ学部の登場
2.国立大学教養部の学部化、公立大学の新設による新名称
3.新しく出てきた言葉の組み合わせや並列学部の増加