今回も学校基本調査のデータをもとに大学の学部がどう変遷したのか見ていきます。今回は1960年代前半(1960年度~1964年度)です。
Contents
1960年度
学部数657学部(前年比+14学部)
新しく設置された学部:酪農学部(酪農学園大学)
なくなった学部:なし
この年は酪農学園大学に酪農学部が設置されました。この学部は全国唯一の学部でしたが、2010年に学部の改組が行われ、農食環境学群、獣医学群に改組されました。その結果2017年をもって酪農学部は廃止されることになりました。「酪農」という名称はここで初めて用いられました。
学部名 | 学部数 | 前年比 |
総計 | 657 | +14 |
文学部 | 71 | +1 |
工学部 | 70 | +1 |
経済学部 | 61 | +2 |
医学部 | 46 | ±0 |
法学部 | 42 | +2 |
農学部 | 36 | ±0 |
商学部 | 34 | +2 |
学芸学部 | 32 | ±0 |
教育学部 | 28 | ±0 |
薬学部 | 27 | +4 |
1961年度
学部数666学部(前年比+9学部)
新しく設置された学部:基礎工学部(大阪大学)
なくなった学部:社会科学部(南山大学)
この年も学部数についての変動は小さい。
この年には大阪大学に基礎工学部が新たに設置されました。基礎工学部はその後、東京理科大学、山口東京理科大学(現在は公立化され、山陽小野田市立山口東京理科大学)に設置され、大阪大学と東京理科大学には現在も設置されています。ただし、両大学とも既に工学部を持っており、この工学部との差別化の意味合いもあります。
基礎工学部と似た名称として、基盤工学部や基幹工学部などが後に設置されています。「基礎」という名称は初めて使用されました。
また、南山大学に設置されていた社会科学部が廃止となり、後年早稲田大学に設置されるまでこの名称の学部は姿を消します。
学部名 | 学部数 | 前年比 |
総計 | 666 | +9 |
文学部 | 73 | +2 |
工学部 | 72 | +2 |
経済学部 | 62 | +1 |
医学部 | 46 | ±0 |
法学部 | 42 | ±0 |
農学部 | 36 | ±0 |
商学部 | 34 | ±0 |
学芸学部 | 32 | ±0 |
教育学部 | 28 | ±0 |
薬学部 | 27 | ±0 |
1962年度
学部数689学部(前年比+23学部)
新しく設置された学部:造形学部(武蔵野美術大学)、衛生学部(北里大学)、海洋学部(東海大学)
なくなった学部:文政学部(大東文化大学)
学部の順位には変動はありませんが、文学部、工学部、経済学部だけで10学部も増加しました。この時期はこの3学部が重点的に設置されていたことがわかります。
この年には武蔵野美術大学に造形学部、東海大学に海洋学部が設置され、両学部とも現在まで存続しています。
また、衛生学部が北里大学に設置されました。この学部は現在は医療衛生学部となっています。設置された際には医療系の要素は薄く、化学科や産業衛生学科など、現在では環境系学部と同様の構成となっていました。
この年に初めて使用された言葉は「造形」「衛生」「海洋」です。
なくなった学部としては文政学部があります。当初は学習院大学と大東文化大学に設置されていましたが、学習院大学は早々に学部を文学部と政経学部に分離しています。大東文化大学はこの年まで残っていましたが、文学部と経済学部に分離しました。学習院大学と異なり、政治学系統はこの時点ではなくなっています。
学部名 | 学部数 | 前年比 |
総計 | 689 | +23 |
文学部 | 77 | +4 |
工学部 | 76 | +4 |
経済学部 | 65 | +3 |
医学部 | 46 | ±0 |
法学部 | 43 | +1 |
農学部 | 36 | ±0 |
商学部 | 34 | ±0 |
学芸学部 | 32 | ±0 |
教育学部 | 28 | ±0 |
薬学部 | 28 | +1 |
1963年度
学部数705学部(前年比+16学部)
新しく設置された学部:なし
なくなった学部:なし
この年は工学部が再び文学部を追い越しました。この年の増加分のほぼ半分(16学部中7学部)を占めています。新たに設置された学部もなくなった学部もなく、工学部の比率が相対的に増加した年度だと言えます。
学部名 | 学部数 | 前年比 |
総計 | 705 | +16 |
工学部 | 83 | +7 |
文学部 | 78 | +1 |
経済学部 | 67 | +2 |
医学部 | 46 | ±0 |
法学部 | 44 | +1 |
農学部 | 36 | ±0 |
商学部 | 35 | +1 |
学芸学部 | 32 | ±0 |
教育学部 | 28 | ±0 |
薬学部 | 28 | ±0 |
1964年度
学部数758学部(前年比+53学部)
新しく設置された学部:衛生看護学部(聖路加国際大学)
なくなった学部:なし
これまでと異なり、1年で53学部も増加しています。特に経済学部は10学部も増加しており、この表にはないが経営学部も8学部から13学部に増加しています。このことから社会科学系、特に経済経営系の学部が増加した年と言えます。
その次に増えているのが、文学部と工学部であり、経済学部と合わせて「3強」の様相を呈してきています。
この年には聖路加国際大学に衛生看護学部が新しく設置された。看護学部は現在最も増加した学部であるが、看護学部よりも衛生看護学部という名称のほうが先にできました。この学部は後に衛生が取れて看護学部として現在に至っています。
この年は後の「ヒット作」の「看護」という名称が初めて使われた年といえます。
学部名 | 学部数 | 前年比 |
総計 | 758 | +53 |
工学部 | 88 | +5 |
文学部 | 84 | +6 |
経済学部 | 77 | +10 |
医学部 | 49 | +3 |
法学部 | 48 | +4 |
農学部 | 36 | ±0 |
商学部 | 36 | +1 |
学芸学部 | 32 | ±0 |
薬学部 | 31 | +3 |
教育学部 | 30 | +2 |
1960年代前半の特徴
1960年代前半の特徴は以下の通りです。
1.前半は動きが少ないが、1964年は大きく増えた
2.工学部、文学部、経済学部の3強構造になってきた
3.のちのヒット作看護学部の元祖が出てきた