ここ最近の教育学の研究で親の年収が子どもの学歴に影響を与えているというものがあります。
有名なのは東京大学教育学部による調査です。
他にも東大生の親の6割以上が年収950万以上などという調査結果(東京大学学生生活実態調査)もあります。
そこで日本学生支援機構の学生生活調査をもとに国立・公立・私立別の大学の親の平均年収(正確には世帯年収)の調査報告をもとにどんな感じで変化しているのかを見てみたいと思います。
この学生生活調査は以下のサイトから2004年度から2018年度まで2年おきの調査結果が入手できます。ちなみに調査方法は説明されていますが、全員に調査したわけではなく標本調査ですが、見た感じランダムサンプリングを意識されているようなので、かなり実態に近い数字になっていると思います。
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リーマンショックの影響そして国立大学の年収上昇
先ほどの調査から平均年収の部分のみを経年でグラフにしたのが下のグラフです。年収の単位は千円なので600万円から900万円の間のグラフになります。
この期間にはリーマンショックがありました。そのため2010年度は全体的に平均年収が低下して、そこからV字回復するような形になっています。
これを国公私立別にみてみると、私立大学は数が多いということもありますが、ほぼ大学全体と同じ動きをしています。また、公立大学は2010年度の落ち込みはそれほど大きくはありませんが、その後の上昇も大きくはなく、全体と比較しても約100万円低い水準となっています。
そんななかで国立大学は違った動きをしています。2010年度の落ち込みもなく(2012年度は若干低下していますが)、一貫して年収が増加しています。
年収額を見ても、2004年度は公立大学に近く、700万円台後半だったものが2018年度には私立大学と同様の850万円超になっています。
国立大学に進学する家庭はどの層が増えてどの層が減っているのか?
そこで各年収別(報告書は100万円区分でしたが、区分が多いので200万円区分にしました)でどの層が増えて、どの層が減っているのかを見てみました。
これを見てみると、以前は25%以上あった600~800万のそうが大きく減少していることがわかります。その一方で1200~1400万円の層や1400万円以上の層が増えていることがわかります。
私立大学はどうなっているのか?
国立大学と同様に私立大学も調べてみました。
国立大学とは逆に600~800万円の層は増加しています(1400万円以上の層も増えてはいますが)。一方で800~1000万円の層が減少しています。また。200万円までの最も経済的に厳しい層が徐々に増加していることがわかります。
その理由を考えてみる
ではなぜこのような変化が起きたのかを考えてみます。
その要因は「都市圏(=年収が高い)の高校生が国立大学に進学するようになった」という点に求められると思います。
以前私立大学定員厳格化の影響を考察したことがありますが、その際に私立大学の動向以外に国立大学に変化が起きていることを見つけました。
年収の高い都市圏の高校生が国立大学に進学するわけですから年収が上がってくるのは当然の結果だと思います。
ただ、これは良いことでしょうか?国立大学は俗に「威信が高い」と言われ、卒業後の進路で優位に立つことが多いです。それが都市圏の高校生で占められると、もともと年収の高い層がさらに年収が高くなり、そうでない層が低いままになるという二極化が進展する可能性があります。
では年収の低い層を優先的に入学させることが良いことかということは留保が必要です。学力を不問にして年収を優先すると国立大学の威信自体が低下してしまいます。
時間はかかると思いますが、非都市圏の高校生の学力向上にお金をかけるということが最も必要な対策であると思います。