今回の新型コロナウイルスの影響でいくつかの国立大学が二次試験を取りやめ、共通テストの点数のみで判定するという方針を打ち出しています。
感染拡大を防ぐためということで必要な措置だったということもできますが、それで問題はないのでしょうか?
ここではそこで生じるであろう課題を考えてみたいと思います。
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共通テストの欠点
先ほども書きましたが、二次試験を行わない場合には共通テストの得点が判断材料となります。まずこの点について考えてみます。
一番大きな問題は「数学の範囲が網羅できていない」ことでしょう。
理由は定かではありませんが、共通テストに現行の学習指導要領上の数学Ⅲに該当する分野はありません。他の科目は基礎科目、基礎なし科目やA科目、B科目を分けてでも配置(これはこれで複雑になって大変ですが)してあるのと比較して、数学だけは大きな範囲が抜けていることになります。
二次試験で逆転ができない
国立大学への出願は共通テスト後です。つまり受験生は自分の点数を理解して出願することになります。二次試験を実施しないということはほぼ合否がわかっている状態で、あとは何人出願してくるかを予想しながら出すだけということになります。
たまたま共通テストの点数が振るわないが、特に理系で数学・理科が得意な受験生は二次試験のある別の大学に出願するでしょう。つまり大学側は独自試験に強い受験生を自ら手放したということになります。
結局どうなったのか
早々に二次試験を実施しないことを発表した横浜国立大学は大規模な二次募集を実施することになりました。最終的な出願自体は定員を上回っていましたが、共通テストのみということで併願扱いされてしまったようです。
こうなってしまうと前期・後期を通じて優秀な受験生はもう既にどこかの大学に合格しているでしょう。つまり、期待する学力の受験生は来ることはありません。
このように二次試験を実施しないということは、手間を惜しんだばかりに大きな負債を負う結果になってしまいます。
入試制度についていろいろな意見はあると思いますが、独自の学力試験はそれなりの妥当性があります。そのあたりも考慮した入試設計が必要になるでしょう。