今回は和歌山大学システム工学部を取り上げます。
詳細は以下のサイトを参照してください。
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和歌山大学システム工学部の特徴
和歌山大学システム工学部の特徴はメジャー制です。ホームページの記載によると2015年度から導入されており、まだ卒業生が出たばかりで評価は難しいかと思いますが、形式だけ見ると面白い形かと思います。
具体的には教養科目・専門基礎科目を終えた後は10のメジャーから2つを第1メジャー(卒業研究で配属されるメジャー)・第2メジャー(一般的にはマイナーと呼ばれるもの)として選択します。そして、2つの専攻状況によってはコースという名称でそれをひとまとまりのカリキュラムとして扱います。
例えば機械電子制御と電気電子工学の2つのメジャーを選択するとロボティクスコースになるという感じです。
単位の規模感としては卒業単位132単位に対して、専門基礎科目が20単位、第1メジャーが32単位、第2メジャーが16単位、専門選択科目14単位、卒業研究8単位となっているようです。メジャーが入ったことによって、選択範囲が指定されています。
他の工学部と何が違うのか?
この仕組みは他の工学部とどういう点で違うのでしょうか?
特に国立大学の工学部は国の政策の影響もあり非常に大きな定員を持っています。その分学科数も多くなっており、旧帝大はかつては10以上の学科に分かれており、大学院重点化などの施策の結果学科が統合されたりしています。
カリキュラムについても学科色が強く、大学によっては例えば共通で学ぶ基礎科目である数学(微分積分・線形代数等)についても学科単位で開講されている例もあります。さすがに効率化の波が押し寄せており、こういった例は減っていますが。
そんな中国立大学の工学部の今の流れは工学部工学科の1学科にして、その下にコース制を設けるというものです。先ほどの学科単位の非効率が解消され、かつ入試においても大括りで優秀な層の募集が可能になります(学科単位だとどうしても学科間で格差が出てしまい相対的に上位でも学科によっては落ちてしまうということが起こります)。
ただし、これらのコースの場合はあたかも学科のような扱いになっているところが多いです(もちろん選択する時期や自由度は大学によって異なりますが)。つまりコースを選択することが学科所属と同じ扱いになります。
コースに所属すると基本的には他のコースの科目を履修することのハードルは高くなります。履修する資格はあっても、他のコースの科目を体系的に履修することは難しいでしょう。
メジャー制があることで
メジャー制の効果は以下の点が考えられます。
1.(学生側としては)学科に所属しているような帰属感を得られる
2.メジャーという小さな単位で履修方針が立てられる
3.(大学側としては)規模が学科に満たなくても広い分野をカバーすることができる
4.メジャーを組み替えることで新しい分野を作ることができる
和歌山大学は決して規模の大きな大学でもないですし、どちらかと言えば各都道府県に設置してある国立大学の中では小さいほうです。定員も、それに伴って配置される教員の数も限られる中で工学の幅広い分野をカバーすることができるのにメジャー制は非常に理にかなっていると言えます。
この仕組みは専門特化教育と教養型教育のいいところ取りとして今後の教育システムの在り方の一つのモデルになるかもしれません。